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その必要は。

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「帰りは特別に、私の傘に入れて あ・げ・る」

 下校時間。

 景冬君は、隣を歩いていた明夏さんから背中を叩かれました。

「地味に痛いから、その癖は止めろ。」

「ほら私の傘、さくらんぼ模様だし!」

「一緒に登校する時に見た」

 廊下に立ち止まる景冬君

「因みに朝、俺も 傘差してなかったか?」

「まあ、雨が降ってたからねぇ」

「じゃあ別に…お前の傘に入れてもらう必要、ないよな?」

 数歩先まで進んでいた明夏さんが、振り返ります。

「私の傘の、どこがいけないの!?」

「誰も、そんな事は言ってない」

「─ じゃあ、仕方ないから、私が あんたの傘に 入ってあげる」

「自分の傘があるんだから、その必要は──」

 明夏さんは、景冬君の鼻先に指を突き付けました。

「どうして あんたは、私との相合傘を嫌がる訳!?」

「何でお前は、そこまでして一緒の傘に入りたいんだ?」

作品名:その必要は。 作家名:紀之介