オヤジ達の白球 46話~50話
「そんなことはないだろう。
必死で投げ込んでいるんだ。そのうちにそれなりの成果は出てくるだろう」
岡崎が真剣な顔で坂上を弁護する。
「だからド素人は駄目なんだ。
いいか。暴投を投げようが、いい球を投げようが、壁は一切反応しない。
投手ってのは捕手のミットめがけて投げるもんだ。
一方的にただ投げりゃいいって訳じゃない。
投げる奴が居て、受け取る相手が居る。
女房役の相方が居てはじめて、打者を相手にしたピッチングが成立する。
暴投や四球ばかり投げりゃ、受ける捕手が可哀想だ。
取りやすいいい球を投げてやりたい。そう思う中でコントロールが
育っていくんだ」
「何を投げても反応しない壁じゃ、成長が遅れるということか!」
「なかなか察しがいいな。
お前。あそこへ座りあいつの球を受けてやれ。岡崎」
「えっ、俺があいつのキャッチャーをするのか?」
「そういうことだ。
コントロールの悪い男の球を受ける。そうするとお前さんの球の取り方も
うまくなる。
どうだ。一石二鳥のいい考えだろ。」
熊の提案に、「そいつは名案だ」と柊もうなずく。
「おまえらは昔から、同じ穴のムジナだ。
同級生のよしみでギャラリーなんかしてないで、あいつの球を受けてやれ。
それで坂上のコントロールも良くなる。お前さんの球の取り方も上手くなる。
結果的にやがて、チームのためにもなる。
いいもんだな。同級生の同志愛というものは。あっはっは」
柊の笑い声が土手にひびきわたる。
(51)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 46話~50話 作家名:落合順平