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銀行強盗のしかた教えます

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01


 
男はふたりで、サングラス。盲人なら杖をついているだろう。カウンターにまっすぐズカズカやってくる。目に不自由はないらしい。だから銀行にしてみれば、あまりお得意様としてお付き合いしたい客ではなさそうだった。
 
「おう支店長いるか、支店長!」
 
大きな声を出されると、他のお客様の迷惑になる。
 
「よおねえちゃん、お前だよお前。客に返事もしねえのか」
 
でも本当は、行員にとって迷惑なのだ。窓口の女子行員はかわいらしい制服の中に首も手足も引っ込めそうになってしまって口も利けない。
 
「ああ? 教育がなってねえのか、この銀行は。こんなんじゃ話になんねえどっかに男はいねえのか男は」
 
そんなこと言っちゃってるけれど、絶対わざといちばんちっちゃな若い子を狙ったんだとその場にいる誰もが思った。思っても口に出してはいけないことが世の中にはある。
 
「お客様、どうかお静かになさってください」
 
とロビーの案内係に保安係。サングラスの二人組はその彼らに歯を剥いた。黒いレンズの下の顔も怖そうだ。
 
窓口にも男子行員が何人か。その中でいちばん偉そうな者に向かって男は言う。「あんたが支店長?」
 
「いえ、わたしは……」
 
「まあいい。こっちは時間がねえんだ」
 
言って小さな紙切れを出した。手袋をはめた指に挟まれて、何やら文字が書いてあるのがわかる。
 
読んでみよう。「ええっと、支店長さんの名は〇〇〇〇。住所は〇市〇町〇〇マンションの〇号室。これで間違いないすかね?」
 
たとえその支店長氏がトイレかなんかに今いたとしても聞こえそうな大声だった。読み上げながら男の顔は店の奥のデスクに着いてる人物の方を向いていた。それが当の本人だと知ってるように見えなくないが、気にしない方がいいかもしれない。
 
「奥さんの名は〇〇。お子さんがいて名前は〇〇。いま小学二年生か」
 
行員達は聞きながら、揃ってしゃっくり始めたようになってきた。「一体、何を……」
 
「なあに、確認しただけですよ」
 
男はニヤニヤ笑いながら紙片を行員に差し出した。が、相手が取ろうとするとヒョイと引っ込めてポケットにしまう。こういうのがユーモアだと考えてると人にヤなやつと思われる。
 
「じゃ、金出してもらいましょうか」
 
「ハア? だから一体何を――」
 
BANG! 男はいつの間にか手に拳銃を持っていた。弾丸がブチ抜いたのは熱帯魚の水槽だった。これをやったら犯罪だという、今がその瞬間だ。
 
ガラスが砕け、水が爆発するように散る。床に広がりロビーを覆い尽くしていった。その中に立って男は言った。
 
「わかるだろ? 俺達は強盗だよ」