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レナ ~107番が見た夢~ 補稿版

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【幸男】

 俺は一時自暴自棄に陥り、仕事も手につかずクビになった。
 僅かに残っていた貯えでどうにか食いつなぐ日々……。
 立ち直ることも出来ず、貯えも底を尽いて死んでしまおうかと彷徨っていた時に、この町で煌く海を、青い空を、沸き立つ雲を見た。
 それを目の当たりにした俺は泣けるだけ泣いた、そしてレナの元へ行こうと海に入って行った……

 俺は今、この町の旅館で下働きをしている。
 海に沈んで行くところを旅館の主人に止められたのだ。
 
 仕事の合間に海を、空を、雲を眺めるのが今の俺の日課だ、レナを失ったばかりの頃はそれを見るのも辛かったが、今はレナを思い出させてくれる大切な時間だ。
 レナがこの世に存在し、俺と愛し合い、空を、雲を、海を夢見て死んだ、その事を俺は胸に抱き続けて生きて行かなければいけない、命を助けられた時、俺はそう思い直した。
 もしそれが消えてしまったらレナは本当にいなくなってしまう、レナが生きた証はもう俺の中にしかない、そんな気がするから……。



                   終