小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

百代目閻魔は女装する美少女?【第一章】

INDEX|1ページ/4ページ|

次のページ
 
「あ~。よく寝たな。」
 オレは目覚めた。ぷにゅ、ぷにゅ。いつもの巨大マシュマロ感触。その存在はふたつ。
「あつ。お兄ちゃん。おはよう。」
「桃羅。起きてたのか。」
「うん。嫁はね、旦那よりも早く起きてなきゃいけないんだよ。」
 日乃本桃羅(ひのもとももら)。オレの実の妹。当然血は繋がっている。この文面から推測できるだろうが、オレ、日乃本都と妹は寝床を同じくしている。明らかに異常だ。
「もう、こんなこと、やめないか。一般的な倫理観ではこれはマズいんじゃないか。」
「そんな一般論はどうでもいいの。桃とお兄ちゃんにはこれが日常なんだから、不倫な
んか捨てちゃえ~!桃が16歳になるまで待っててね。」
「何を待つんだ、何を。それに捨てるのは不倫じゃねえ。」
「あ~あ、民法を早く改正して、兄妹が自由にチョメチョメできる日が待ち遠しいな。」
「そんな改正ありえねえ。」
 オレと桃羅の部屋は当然別々である。ベッドもそれぞれ部屋にある。しかし、寝る時間になると桃羅はオレのベッドにインしてくるのである。オレは16歳、桃羅は14歳。もはや同衾が許されない年齢である。
「だってお化け怖いんだもん。」
これはうそである。桃羅が幽霊とか妖怪とかそんなものを怖がる姿を見たことがない。小さい頃、お化け屋敷に行くとキャッキャッと喜び、脅かす被りものの従業員を見ては笑っていたのを覚えている。
「こんな会話をするのは何回目だ。」
「3653回目よ。」
「数えていたのかよ。」
 まあ適当に言ってるんだろうけど。桃羅が物心ついた頃からは一緒だったような気がするな。
 桃羅はマリーンブルーの長い髪をふたつの団子にし、どんぐりを横にしたような大きな丸い眼も同じ色に輝き、大海を湛えているようだ。いつみても思わず見とれてしまう美少女である。おっと、ヤバい発言撤回。
『ボヨヨヨヨヨヨ~ン。ボヨヨヨヨヨヨ~ン。』
 あれ?桃羅と反対側にも奇妙な感触があったような。
「どうかしたの、お兄ちゃん?」
「い、いや何でもない。」
 目を擦ってよく見るとそこには何もなかった。おかしいな。ただここ数日こんな感覚に襲われる日が続いている。きっと疲れているいるんだろう。まあ朝っぱらからこんなことを続ければ多少の疲労や幻覚に襲われても仕方あるまい。

 オレは日乃本都(みやこ)。高校一年生。ブレザーに身を包み、登校するオレ。学校へ行く道すがら、携帯で自分のブログを軽く更新。『では今日も学校にいってきます。みんな頑張ろうね。』簡単な一言。同級生や桃羅にもブログのことは話していない。日常のことを書いているだけのごく平凡なもの。他人のブログにも適当な書き込みをしている程度。
オレの向かう先は地元の平凡な『春眠暁覚(しゅんみんぎょうかく)学園』という高校だ。名前が四文字というのは最近の流行である。と言っても長いので、通称『春学(はるがく)』だ。
「おはよう。」「お早う、みやこ。」「グッドモーニング、みやこたん。」「おはよう、みやちゅん。」「みやこちゃん、おはよう。」
 高校の門までの並木路、たくさんの声がかかる。何の変化もない日常だ。で、フツーに登校しているということは、今オレは女子の制服を着ている=スカートを穿いているわけだ。ここまではオレの日常である。どこかおかしいだろうか?いやそんなことはない。まったくいつもの通りだ。長いマリーンブルーの髪を靡かせた可憐な女子高生。もちろんエクステなどではない。そう、元々オレは女装していて、学校では最初から女子扱い。その女装にこのからだはぴったりフィットしている。
 校門には生徒会が待っている。遅刻生徒チェックというありがちなシチュ。『生徒会獅子天王』と呼ばれるイケメン集団がそれをやっている。それぞれ、信長、秀吉、家康、光秀と名乗っているらしい。女子生徒の人気は高いものの、悪い噂も絶えない。美貌を活用して、かなりの悪事を働いているらしい。全員がロングヘアーで顔を隠しているので、ほとんど表情が確認できない。だが、髪の間からチラリと鋭い眼光を覗かせている。やっているのは遅刻チェックではなく、『女子生徒の品定め』というのが定説である。
「ヒュー!飛びきりじゃのォ。」
 信長が声をかけたのはオレらしい。当然スルーした。声ははるか頭上から聞えてきた。そいつは校門のコンクリート柱の上に座っている。それも片膝ついたヤンキーっぽい態度である。とても生徒会メンバーとは思えない。
「無視か。この信長サマをのォ。いい根性してるのォ。あとで食べられても知らないからのォ。ハハハ。」
 あれ?何だかあいつの頭の上に白いものが見えたような。きのせいかな。
校門のふたつの柱にふたり。その後ろの理事長の銅像にもふたり狛犬のように座っている。ひとりは理事長の頭を撫でている。これが生徒会だというのはうちの学校は無法地帯なのか、超自由なのか?他人のことを言える筋合いでもないような気がするが。とりあえずこんな感じの登校ぶりである。

 翌朝。いつもの通り、桃羅はオレの横で寝息を立てていた。昨日『旦那より早起きはいけない』云々言ってた通りだ。これがオレの左隣。そして、右側には。
『ボヨヨヨヨヨヨ~ン。ボヨヨヨヨヨヨ~ン。』
 昨日と同じ強い弾力性のある感触だ。桃羅のソレも小さいわけではないが、これはレベルが違う。
『バシッ!』
「痛え!」
 突然左側からチョップが飛んできた。
『ZZZZZZ・・・』
 桃羅はまだ睡眠中。無意識にオレを攻撃してきたらしい。女のプライドを傷つけられたからだろうか。
 そんなことより、問題は右だ。今日は明確な存在感があった。
「う~ん。おはよう。元気かな。」
「だ、誰だ、お前はっ!」
 オレの隣に横たわっているのは、紫のネグリジェ、それもシースルーの美女。オレよりはかなり年上に見える。長い髪は紫、からだは桃羅よりは大きいようだ。切れ長の目にはやはり紫のアイシャドウが妖艶さを際立たせ、シャープな鼻筋、きりっとしつつも淫靡な唇が長い夜を想起させる。ちょっとオレには早いけど。
「そんなことないよ。なんならをねゐさんと今から一発いっとく?あらいきなり過激発言禁止よ。」
「それは自分の発言だろ。いったいなんなんだ。どこの誰だ。どうやってここに入った?」
「そんなに矢継ぎ早に質問しないでよ。夜はまだこれからだよ。ウフフ。」
「何を言ってる。もう朝だ。」
「そうなの。残念だね。じゃあ次回までお預けとするね。」
「何をお預けにするんだ。」
「焦らないでよ。どれどれ。ここから出て話をするかな。」
 紫の女はベッドから出るとオレの椅子にゆっくりと腰掛けて、机に肘をつけた。強烈な光、いや衣装が目に入ってきた。大晦日恒例歌番組のあの歌手のようだ。
「大林幸子?いやどこのオバサン?」
「オバサンとは失敬ね。をねゐさんは閻魔大王よ。今後継者を探しているの。その候補者があなた、日乃本都なのよ。」
 いきなり、とんでもない、わけのわからないことを言い出した。
「さっぱり、意味がわからない。閻魔大王?閻魔って男じゃないのか?後継者候補?お前、頭おかしいんじゃないか。早くここから出てってくれ。でないと、警察を呼ぶぞ。」