赤のミスティンキル その後の物語
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ミスティンキルは自らの行為に絶望する。そして暴走を起こした多大な魔力が、反動として彼を覆い包む。
止めどなく流入してくる魔力。果たしてこの魔力は自分のものなのか、ウィムリーフのものなのか、フィエルのものなのか、それともスガルトのものなのか。
――はたまた王国が発動させた魔力なのか。そもそも自然のものとしてここにあった魔力なのか。彼には分からなくなった。
ただただ、自分が魔力と、世界と、繋がっていく。
自分とは――
魔力とは――
世界とは――
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ミスティンキルの自我は崩壊した。
彼の意識はどこまで行っても世界と繋がり、また世界は彼の意識に内包されていく。
“自分”はどこまで行っても“自分”でありつつ、どこにも“自分”などというものはない。世界もまた然り。
すべてを知り、すべてを忘却する。
ミスティンキルであった者の意識は、そこで切れた。
作品名:赤のミスティンキル その後の物語 作家名:大気杜弥