傷だらけの天使
ドームハウス
「兄貴、これからどうするの?」
「引きこもり革命軍の程塚隆二に会いに行く」
「我々は、大地に引きこもる、の程塚隆二に?」
「そうだ」
「知り合い?」
「まあな」
「その人、どこにいるの?」
「転軸山」
「ひきこもり、うつ病は、砂糖の食べ過ぎ」
「なんだいそりゃあ?」
「新しい学説」
「へ~~~え」
「右を見ても、左を見ても、お寺ばっかしじゃん」
「そうだなあ」
二人は、バス停に戻った。
「転軸山は、次の次だよ。次のバスは三十分後」
「じゃあ、歩くか」
「そうだね、高野山の勉強にもなるしね」
転軸山に着いた。のぼりがはためいていた。
「我々は、大地に引きこもる、兄貴、ここだ」
「そうみたいだな」
二十軒ほどの丸い家が建っていた。
「変な家だねえ」
「ドームハウスってやつだな」
「どの家なんだろう?」
「訊いてみるか?」
「そうだねえ」
ショーケンは、いちばん近い家のチャイムを鳴らした。
「すみません。程塚さんの家を探しているんですけど、ご存知ありませんか?」
「程塚さんって、程塚隆二さんですか?」
「はい、そうです」
「パスワードを言ってください」
「パスワード?」
「はい」
「知りません。高校のときの友人のショーケンと言えば分かります」
「ちょっと待ってください」
「はい」
「高校の名前を言ってください」
「聖橋(ひじりばし)高等学校」
「ちょっと待ってください」
「はい」
アキラは後で聴いていた。
「パスワードとは驚いたね~~」
戻って来た。
「わたしが、案内いたします」
二人は、程塚隆二のいるドームハウスに案内された。
「りゅうちゃん、久し振り~~!」
「おお~~~う、ショーケン!」
それは、高校時代以来の再開であった。
「どうしてた、ショーケン?」
「いやあ~~、テンプターズ解散後、失業しちまってねえ」
「そこまでは知ってる」
「ぬいぐるみを着て、天地真理のバックで踊ったりして、アルバイトしてたり」
「そんなことまでやってたんだ」
「帰りの電車賃が無くって、僕を知っていた女性から、お金をもらったこともあったよ、サインしたら喜んでた」
「ショーケンのファン、多かったもんな~~」
「天国と地獄を体験したよ」
「大宮駅は、女性ファンで凄かったねえ~~」
「業界に踊らされてただけだよ」
「いきなり、ショーケンからメールが来て、びっくりしたよ。頭脳警察に追われてるんだって?」
「日比谷の野音で、反政府ロックコンサートをやったら、群衆を扇動したということで、危険人物になって、全国指名手配」
「民衆扇動罪か、僕と同じだ」
「行く場所が無くって困っているんだ、かくまってくれないかなあ?」
「いいよ、同じ仲間だから」
「ありがとう。感謝するよ」
「空いてるドームハウスがあるから、そこを提供しよう」
隆二は、アキラを見た。
「二人?」
アキラが答えた。
「そうです、二人です。よろしくおねがいします!」
「分かりました。じゃあ、早速案内いたしましょう」
空いてるドームハウスは隣だった。
「一応、生活必需品はそろっています」
アキラが質問した。
「このドームハウスって、コンクリートですか?」
「発泡スチロールです」
「えっ!」
「安心してください、耐熱性なので燃えたりはしません」
「壊れないの?」
「強化発泡スチロールなので大丈夫です」
「驚き桃ノ木」
「空気の層で断熱するので、夏は涼しく、冬は温かく過ごせます」