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山之内洋一
山之内洋一
novelistID. 66555
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傷だらけの天使

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拘束ロボット・ムサシ



人間のクズ 人間のクズがありましたら 直ちに回収にまいります

ラジオからは、頭脳警察の公報放送が聞こえていた。

通報はキューキュウーヒャクトウバン キューキュウーヒャクトウバン

アキラがぼやいた。
「捕まったら、強制労働だ。いやだなあ」
道が無くなっていた。ショーケンは赤いスポーツカーを止めた。
「アキラ、先を見てこい」
「あいよ」
アキラは直ぐに戻って来た。
「兄貴、ススキだらけだ」
「しょうがない、引き返すか」
「そうだね~」
ヘリの音が聞こえて来た。
「兄貴、頭脳警察のヘリだ!」
「クルマが動かない、エンストだ!」
「兄貴、逃げよう!」
「待て、様子を見よう」
ヘリから、拘束ロボット・ムサシが出て来た。背の空中歩行器を逆噴射させながら。
アキラは叫んだ。
「やばい、ムサシだ!」
二人はクルマから飛び出した。雑木林の方へ向かって走り出した。
ムサシは素早かった。着地すると、二人に向かって駆け出していた。
直ぐに追いついた。二人の目に立ちはばった。
「止マリナサイ!」
二人は止まった。
「アキラ、最終手段だ」「あいよ」
ショーケンは「降参、降参!」と言って、両手を上げた。
ムサシに近付くと、しゃがみこんだ。
背後のアキラが、ムサシに電撃手投げ弾を投げた。ムサシの胸に当たると、炸裂した。ムサシは、後ろに倒れ込んだ。
二人は、雑木林に向かって走り出した。
「ロボットは、山道は苦手だ」
「あいよ」

気が付くと、二人は山の中腹にいた。
「ここまで来れば大丈夫だ」
「そうだね。どこだろうここは?」
「クルマのナビでは、高野山の近くだったなあ」
「どっちに行こうか?」
「引き返したら、あいつがいるしなあ」
「あっ、そうだ。携帯のナビがあった」
アキラは、上着のポケットから携帯電話を取り出し、覗き込んだ。
「兄貴、北はどっち?」
「ちょっと待て・・」
ショーケンは、周りを見ていた。
「おそらく、あっちだ」指さした。
「どうして分かるの?」
「木の枝で分かるんだよ。枝や葉が多いほうが、南」
「なるほど、兄貴は何でも詳しいねえ」
「中卒とは違うよ」
「兄貴は、高校中退だからなあ」

「どっちに行くんだ?」
「こっちに行くと、道があるよ」
・・・
「これだな・・」
「そうだね!」
「この道、どこに行くんだ?」
「県道に出るよ」
「そこから、高野山は遠いのか?」
「かなり遠いよ、山道を二十九キロ」
「遠いなあ~」
「橋本から登山電車が出てる」
「橋本までは?」
「約二キロだね」
「そこに行こう」
「あいよ」
「高野山は聖地だからな、やつらは入って来れないからな」
「ははは、ざまあみろ!」
「高野山には、程塚隆次がいる」
「大地革命軍の?」
「そうだ」
「知ってるの、兄貴?」
「中学の時の友達だったんだ」
「じゃあ、同い歳なんだ」

作品名:傷だらけの天使 作家名:山之内洋一