サンタクロースパイ
ダメだよ!もし、言わないなら、毎年クリスマスに
君にプレゼントをあげに来るから!!」
「は~い!!」
「ありがとう!!ところでさ、実はこの前、君と君の友達の会話を聞いたんだけど、何で犬が好きなら、犬そのものを欲しいって思わないの?」
「あ~、私も、ホントは本物のワンちゃんが
欲しかったんだけど、ペットを飼おうと思ったら、凄くお金が
かかっちゃうし、しつけも大変だから、お父さんとお母さんに
迷惑かけちゃうから」
「・・・・・・!!なんて親思いな娘なんだ!!こんな良い娘、
初めて見る!!」
「ねぇお兄さん、私の欲しいモノが何か聞いたんだよね?」
「うん」
「じゃあ、この箱の中には、ワンちゃんのお人形さんが
入ってるの?」
「それは、明日の朝、確かめてみると良いよ!!お楽しみに!!」
「うん!!分かった!!」
「ところで君、名前なんて言うの?」
「私は、〝空野叶そらのかなえ〟!!」
「そっか!良い名前だね!!」
「ありがと!!お兄さんは!?」
「俺は〝網田謎留〟!!」
霧河はここで、本名を名乗った。
「分かった!!じゃあ、名前、覚えとくね!!」
「ありがとう!!じゃあ、また来年来るね!!」
「うん!!お兄さん、頑張ってね!!」
「うん!!君も頑張ってね!!おやすみなさい!!」
女の子が手を振り、
「元気でね~!!」と言った。
霧河は叶の家を出た。家を出た後、
入ってきた時と同じ〝サムターン回し〟で
外側からカギをかける。
霧河の活動はもちろん、まだ続いていた。が、
叶は、再び眠った。
翌朝、叶は、目が覚めた後、枕元を見てみた。枕元には、
クリスマス仕様のラッピングがされた箱があった。
「箱はちゃんと置いてあるけど・・・やっぱり、昨日の事は
夢だったのかな?」
そう思いながら、箱を開けてみた。すると、
本当に犬の人形が入っていた!!
「え!!嘘!?夢じゃなかったんだ!!ありがとう!!
〝サンタクロースパイ〟さん!!」と言った。
その直後、叶の部屋に叶の母親が入ってくる。
「叶!もう朝ご飯、出来てるわよ~!!」と
母親は言う。そこには、母親が置いていないどころか、
買ってすらない犬の人形が置いてあった。ちなみに、それは〝チワワ〟の人形だ。
そう、霧河は、小さな女の子が好きそうな種類をチョイスしていたのだ。
「お母さん!サンタさんってホントにいるんだね!!」
叶の母は、
「まさか!私も買った覚えのないモノなのに!!何で?それと、
この娘、何で今年は〝○○が欲しい〟って言わなかったんだろ?
まぁ良いわ!不思議な事が起こったけど、叶も喜んでるし!!」
もちろん、いつもなら、霧河の幼い頃に亡くなった霧河の両親と
同じく、叶の母親が、叶が寝ている最中に密かに叶の枕元に
叶の欲しいモノを置いていた。だが、今年だけは違い、
母親すらも覚えのない事なので、母親もとても驚いている。だが、叶は、霧河に言われた約束通り、
「黒い服を着たスパイのお兄さんからもらった」とまでは言っていない。