赤秋の恋(美咲)
美咲が交流サイトで援助交際を始めて、宏は3人目の男であった。援助交際をするきっかけは、男を信じられなくなったからであった。お金に困るわけではなかったが、お金で体だけの関係であれば、心の傷は残らないと考えたからであった。それに女の体が男の体を求めていることもあった。
75歳の男。自分の父親より年齢的には5歳も上なのだ。後妻業の女、そんな悪女のイメージが自分の気持ちの中に浮かんだ。看護師である美咲は、もしものことがあっても自分であれば、高齢者であっても、その場はしのぐことができるだろうとも考えた。それに自分自身もそうであるが、性欲はいくつまであるのかと思う興味もあった。
ラブホテルに入った時、宏は帽子を取った。頭部の半分は禿げ上がっていた。美咲が想像したそのままであった。それは、許せる範囲でもあった。
浴室で宏の体を流した時、ペニスは硬直した。それが、ベットに入ってみると、柔らかなままである。
「お役に立てないみたいね」
「その気持ちはあるよ。君は若いし、美しいから、体を合わせていれば何とかなるだろう」
宏は美咲の背中を愛撫した。刺青のある皮膚は、ざらざらとした感触だった。照明を落とし、メガネも取っているから、絵柄は分からないのだが、美咲が悶えるから、その竜は動いているように宏は感じ、宏は自分の欲望が、竜の体に乗り移ったのだろうかと感じた。唾液が乾いてしまうほど舐めまわした。あの、美しさを感じた唇の刺青とは全く別な感覚だった。宏の、気持ちも唇の感触も違っていた。
ヤクザな男になったような高揚感さえ感じていた。美咲の肌から離れた時、麻薬もこんな感じになれるのかもしれない、宏はそう感じた。
「どうするの。全然ダメ見たい」
美咲は宏のペニスを指でつまんだ。侮辱されたのだろうか?
宏は美咲の身体を再び愛撫した。美咲はその宏の仕草に演技をしてくれているのだろうと、宏は感じていた。美咲は悶え始めた
宏が妻以外の女性の肌に触れたのは、妻と結婚する以前のことだった。女性を悦ばせる技巧的なことは何も知らない宏なのだ。
美咲は宏の唇に自分の唇を重ねた。ただ、そうしていた。鼻で呼吸をするが、その吐き出す息が、美咲に当たらないようにと、宏は少しづつ吐き出した。加齢臭に口臭までが気になり始めた。歯を磨いておいたが、美咲が美しさをまき散らすから、宏はますます年齢を感じてしまっていた。