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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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L K 2 「希望と絶望の使者」

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第七話 潜む脅威



「君たちは、僕たちセカンドロイドを人間だと言ってくれたね。すごく嬉しかったよ」
 キュウがニコニコしながら機嫌よく椅子に座り、リンゴジュースをグラスに注いで言った。
「はい、キュウ様。私はあなたがアンドロイドだと知っていますが、もし知らなかったら完全に人間だと誤認してしまうでしょう」
とグレンが言うと、
「それなら私の方がもっと激しく誤認しているみたいね。グレンは外にいることが多いから、エル様やジェイ様と活動する機会があるけど、私はミュウ様の子守で部屋の中にいることがほとんどなのよ。じっと眠っているだけのミュウ様を見ていると、アンドロイドだなんて到底認識出来ないわ」
ピンキーはベッドで眠るミュウを見ながらそう話した。
「そうか、アンドロイドから生まれた僕は、人間になれるのだろうか?」
キュウは目をキラキラさせて、リンゴジュースを一口飲んだ。
「きっとなれますよ」
「そうですわ。きっと」

「そう簡単にはいきませんよ。人間がキュウ様をどう思うかが問題です」
 そこにブルーノが現れた。
 キュウはグラスをテーブルに置くと、
「人間はセカンドロイドのことを、嫌ってるって本当かな」
ブルーノは部屋のドアを閉めた。そして一呼吸(一瞬のフリーズ)置いて、
「嫌っているのではありません。脅威なのです」
部屋に入ると、スキャナーをテーブルに広げ始めた。その時キュウは、グラスが倒れそうになるのを、慌てて手で押さえた。
「ブルーノ。どうしてそんなふうに思うのだ?」
グレンが訊いた。
「・・・」
ブルーノは答えない。再びフリーズ。
「そうね、ブルーノ。言葉に気を付けてちょうだい。キュウ様には感情があるのよ」
「それが問題だと言っているのです」
キュウは眉をひそめた。
「私はそうは思えないわ。ミュウ様も脅威になるはずがないもの」
「セカンドロイド1体でも問題なのに、2体もいては事は重大です」
ブルーノはスキャンの準備をしながら、淡々と話している。
「我々はキュウ様とミュウ様をお世話させていただいて、脅威だと感じたことなど一度もない」
「しかしマダム・スーは太陽系での事実をご存知です。セカンドロイドが人類にとって、いかに危険であるかお聞きしました」
「僕は人間に反抗しようなんて思ってないよ」
キュウは笑顔を作りながら話しているが、この部屋に、お愛想で作り笑顔が出来る者は他にいなかった。
「それはここに、人間がいないからではないでしょうか」
「いたとしてもケンカはしないさ」
「では、私が人間だったらどうでしょう。私があなたを危険だと言ったとしたら」
「・・・」
キュウは笑顔を作り続けられなくなった。
「アンドロイドは人間に尽くすために存在しています。しかし、私があなたに命令ばかりして、自由を認めなければ、あなたは耐えられるでしょうか?」
「やめないかブルーノ。君らしくない」
「そうよ。いい加減にしてちょうだい」
グレンとピンキーは、キュウの気持ちを察してブルーノを止めた。この重苦しい空気を感じ取れるのは、感情豊かなキュウだけだったろうが、グレンとピンキーもケアプログラムのおかげでブルーノに詰め寄った。
「そうだね。私はルージュとイエロービーとも、同じことを話して来た。今彼らは、私の意見を理解しているようだがね・・・」
その時、ミュウが大声で泣き出した。
「あらどうしたの? いい子ちゃんね。ヨシヨシ」
ピンキーはミュウを抱きかかえて、顔を寄せ、優しく揺らしながら立ち上がった。

「どうしたのかしら。ミュウが泣いてるわ」
 私はキッチンで、パイ生地にリンゴのスライスを並べている手を止めた。
「そうですね、エル。でも赤ちゃんなのですから、仕方ないのでは?」
「うん、そうだけど。いつもと様子が違うような・・・?」
遠くから微かに聞こえるその泣き声は、人間なら聞き取れないくらいに小さかったけど、何か気になるわ。また胸騒ぎがする感覚。
「赤ちゃんの泣き声で感情の変化を読み取る機能は、ピンキーにも備わっているでしょう。任せておいても大丈夫です」
「そうね」
「それより、並べたリンゴの位置に、平均0.73ミリの誤差があるのが気になります」
「ぇえ? そんなこと気にしないでよ」
 ケイはリンゴのスライスが載ったお皿を、両手で私に差し出し、再びパイ生地に並べるように催促して見せた。それで私は不安を払拭するように、リンゴを再び並べ始めた。
「・・・でも今日、ブルーノが感情を持つことに批判的な意見を言ったわ。私それが気になっていて」
「クルーの数が増えれば、考え方も多様になり、意思の統一は難しくなります。やがてグループが出来て対立が起こると、ルールが必要です。それでもそのルールを容認しないグループが現れ、分裂し、別のルールのグループを作るのです」
「国が生まれるってわけよね」
「そうです。増えた人口を統制するためには、作業の分担に不公平があってはいけません」
「不満を募らせた者が、反抗するようになるわけね」
「はい。だから面倒だったり危険な作業は、奴隷の仕事になってしまいます」
私はケイの顔を見ないで、真剣にリンゴを並べながら聞いていた。
「そんな歴史は必然だって言うの?」
「その通りです。だから人間は、感情を持つアンドロイドを不要なものと考えるのです」
「ただの労働力として扱いたいのね。でも、80(ハチマル)には感情なんてないはずよ。どうして反抗的な意見を言ったのかしら?」
「・・・それも気になります」
「え? きれいに並べられてないかしら」
私は考え事をしていると、均等にリンゴを並べられない。私だってアンドロイドなのに、ヘタクソね。そして、アップルパイをプラズマオーブンの中に入れて、スイッチを押した。
「きれいに焼けるといいな」
 ケイはキッチンを離れ、モニターの前に立って、ラボに連絡を取った。
「こちらケイ。ブルーノ応答せよ」
『はい。ルージュ、リプライ(返答)』
「ルージュ? そこで何をしている?」
『私とイエロービーで、DNAナノロボットの農場シミュレーションを実施しています』
「ブルーノはどうしたんだ?」
『ブルーノは、グレンとピンキーのスキャニング作業のため、そちらに向かいました』
「君たちのスキャニングは完了したのか?」
『いいえ、バックアップ作業のみ完了しています』
私はルージュの話し方にも違和感を覚えた。親しみを持った話し方じゃない。相手がケイだから?
「ルージュ、私よ。どうしてフルスキャンをかけなかったの?」
『機能上の問題は発生していないからです・・・』
突然、ケイが走って部屋を出た。無言で走り出したケイを見て、私も慌ててその後に続いた。
 なんてこと! ケイの方が皆の心配をしてくれていたんだわ。私なんかケイと二人っきりになりたくて、そんなことまで気が回らなかったのに。やりたいことを優先する私の悪い癖だ。どうか胸騒ぎが当たりませんように!
 ケイはすごいスピードで通路を駆け抜け、隣の居住棟につながるインターフェースモジュールに入った。ここは、居住空間を快適にするための設備が稼動しているエリアだけど、外から行くより、この方が近道だわ。

「ピンキー。ミュウ様をベッドに置いてください」