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偽娘玄奘 ジャーニャンゲンジョウ

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 白話小説の研究家のあいだでは有名な話だが「西遊記」に登場する玄奘三蔵は、じつは少女と見まごうような絶世の美少年だった。彼が無頼の妖怪どもを引きつれ、山川万里を越えて西域天竺までたどり着けたのも、ひとえにその美貌のおかげといえよう。
 すなわち釈尊説いていわく、
「もし五根を縦にするならば、ただ五欲のままに埒なくして制すべからざるなり」
 つまりひとたび玄奘がその無垢衣を脱ぎすて、恥じらいながらも股をひらいたならば、たちまち五人の男どもが欲情して勃起したであろうという、すばらしい美貌の持ちぬしだったのである。
 色即是空。
 では、そんな彼らの旅の様子を少しのぞいてみよう――。


 天山南路を、西へ向かって急ぐ三蔵法師一行。
 すでに日は暮れかけている。
「兄貴ィ、そろそろ寝るところを探そうぜ、ブヒッ」
 馬のたづなを引いている猪八戒が鼻をならした。孫悟空がキョロキョロとあたりを見まわす。
「んなこと言ったってよう、ここはタクラマカン砂漠のど真ん中だぜ。いったいどこで寝るっつーんだよ」
「あっ、アレ見てよ」
 八戒の指さすほうに、なにやら寺院らしき建てものが見えてきた。はんぶん砂に埋もれ、風に吹きさらされている。悟空は目をとじて、犬のように鼻を利かせた。
「……いるな、妖怪どものにおいがプンプンしやがるぜ」
「どうするよう兄貴ィ」
 悟空は尻をかきながらブっと屁をひった。
「おいら、なんだか気が乗らねえなあ。ここは見なかったことにして先を急ごうぜ」
「そんなあ……」
 すると沙悟浄が、折りたたんだ扇子であたまの皿をペシッと叩きながら言った。
「せやけど兄やん、今から寝ぐらさがすいうのもしんどおまっせ。ここは妖怪どもを軽ゥくいてこましたってやね、フカフカの寝具のうえで仲良う4Pと洒落込もうやおまへんか」
「お、悟浄ってば良いこと言うじゃん、ブヒヒヒッ」
 悟空は、お行儀よく馬の背にまたがる玄奘三蔵をチラッと見あげた。鞍のうえに可愛い尻をのっけて、割れた法衣のすそからスベスベした白いすねをのぞかせている。急にペ◯スの付け根あたりに切ない鈍痛がこみあげ、股間をおさえウッとうめいた。
「そういやおいら、もう三日もお師匠さまの功徳にあずかってないや」
「でしょでしょ? オレもこのままだとセッ◯スしてる夢見ながらパンツ汚しちゃうかもしれないしさあ」
 悟空と八戒に無遠慮な視線をむけられて、玄奘が身をよじり頬を赤くそめた。
「やだもう、ふたりともそんなやらしい目でぼくを見ないでよゥ」
 そのときボワーンと銅鑼が鳴り、寺門の大とびらが勢いよく開かれた。伽藍のおくから悪鬼どもがバラバラとかけ出し、戟や青竜刀を手になだれをうって押し寄せてくる。
「ちっ、早くもお出迎えが来やがったか」
「兄貴ィどうするんだよう」
 悟空は道服のえりから手を突っ込み、わきのしたをボリボリかきながらまゆを寄せた。
「しょうがねェ、やっちまうか」