愛シテル
「先生! 休憩、長過ぎ! すごく忙しかったんですよ! さっさと指示下さい。ほら、カルテ!」
りく也の周りを、レジデントや看護師が取り囲む。カルテが次々と手に積み上げられた。クランケ・ボードに目をやると、火事による火傷、交通事故による外傷、強盗事件による銃創…と、書ききれないほどの患者名が残っている。携帯が何度も震えたはずだ。
キュッとりく也は唇を引き結んだ。カルテの重みが彼を現実に引き戻す――その唇に一瞬、蘇った甘やかな感触は、りく也の胸の奥底に封じられた。
四月の終わり、よく晴れた朝に、ユアンは逝った。
穏やかに、眠るように――――