愛シテル
ローカ側の窓から中を見ながら歩を進める。ユアンがりく也を目で追っていた。まだ鼻の頭はうっすらと赤いままだ。さっきの笑みの余韻が、りく也の胸の内に温かく広がった。
『彼以外に愛する人を見つけられた? リクヤ?』
耳に蘇る夢の声。
――ありえない
それでも、ひとときとは言えユアンの素直な感情表現が、『あの日』までの日常をりく也に戻してくれた――火のない煙草よりは、確実に。
「サードの三人を頼む」
スタッフが通りすがりに声をかけて行く。「わかりました」と答えて、りく也は口元を引き締めた。現実の時間が動き始めた。