「美那子」 最終話
「秀一郎も働くようになって大人になったって感じたわ。美那子と言い自分の子供じゃないみたいに立派に思う。お母さんね、今付き合っている課長さんとは別れる。もう不倫はしない。あなたたちに恥ずかしいから」
「なあ、母さんおれや美那子が忙しくなる前にまた三人で旅行に行かないか?みんなで温泉に入って」
「いいわね、そうしましょう」
「同じ宿にしよう。思い出も語れるし」
秀一郎の提案で三人は名古屋空港から再び仙台へ出発した。
美那子20歳、秀一郎24歳、そして美樹は52歳だった。
宿の女将は三人を覚えていた。
それほど目立った三人だったのかも知れない。
混浴の露天風呂へ向かう。
美那子も美樹も浴衣ではなくバスタオルを巻いて入浴した。
数人の男女が入っていたが気にせずに入る。
「ここで美幸さんと出会ったのよね。お兄ちゃんの初体験の相手」
「こら!そんなこと言うな。聞こえているだろうみんなに」
「美那子、そうだよ、恥ずかしって思うよ男の子は」
「ええ?なんで」
「初めての時って言われるのは恥ずかしいのよ、男子は」
「お兄ちゃんそうなの?」
「もういいよ。言った後で慰めてくれなくても」
三人は顔を見合わせて笑った。
部屋に戻って美樹は以前のようにはお酒を飲むことはなく、朝を迎えた。
早朝に目が覚めた美樹は一人で露天風呂に出掛けた。
運命の出会いがそこにあることを知らずにだ。
官能小説「美那子」終わり。
*しばらくの間執筆活動はお休みしたいと思っています。
ご愛顧に感謝申し上げます。