グレイ家の兄弟 THE MOVIE 「暴走中」
プロローグ
― イギリス・ソルシティのとある公園で ―
G4 ― 長男フレディ、次男ブライアン、三男ロジャー、四男ジョン ― とその幼なじみアメリ・ウェンとヒラリー・ヤンの6人が、暇つぶしに雑談していた。そのとき、日本のモグラ山のような遊具の穴がプリズムのように光り、6人は遊具の穴の中に吸い込まれていった。
穴の中は妙な空間だった。全員の体が、得体の知れない浮遊感に襲われ、ロジャーとヒラリーはうるさいほどに騒いでいた。特に、ロジャーはフレディの手をつかもうとしたが、なかなかそれができないでいた。
すると突然、不思議な感覚が皆の体から消え、彼らはどさっと地面に落ちた。
「いててて…。どこだ、ここ」
6人が見わたすと、そこは熱帯に生えていそうな高低さまざまな木が茂った密林のような地であった。
「…?」
さらに奥を見ると、南米にある古代神殿のような建築物がある。彼らは、まだ目を丸くしてその非現実的な光景を見つめた。しかし、冒険好きなフレディはにっと笑うと、
「あの建物、何かすごそうだな。行ってみっか」
と威勢のいいセリフとともに、その謎めいた城のほうへ走っていった。残された5人は、やれやれと思いながらも、彼の後を追って走っていった。
そんな彼らを、別空間から見つめ、悪そうな笑みを浮かべる者がいた。彼女の名はティナ・ジョンソン。彼女は現実世界の人間に勝手に懸賞金を掛けては現実世界に別世界への入り口を作り、そこにターゲットを誘い込んでは迷わせて捕らえ、死刑にまで追いやるという、実に恐ろしい女である。彼は6枚の手配書を見て、さらに歯をむきだして笑って言った。
「ふふ、いいターゲットが来たわ。一人残らず捕らえさせましょ」
そんな彼女のたくらみを、彼らは知る由もなかった。
作品名:グレイ家の兄弟 THE MOVIE 「暴走中」 作家名:藍城 舞美