堕とされしものたち 機械仕掛けの神
千歳は妖艶な笑みを浮かべるとデスクの裏に備え付けてある隠しボタンを押した。
どこからかモーター音が聞こえ、千歳の座っていた後ろの壁がゆっくりと動きはじめた。そう、隠し部屋だ。
千歳は薄暗い部屋の中へ足を運んだ。そこは冷たい壁で囲まれており、静かな息遣いが複数聞こえてくる。
薄暗く、普通の人間にはよく見えないだろうが、千歳には見えていた。そこには複数の人間――年端も行かぬ少女がいた。それも皆、手錠を嵌められ、首輪から伸びた鎖は壁にしっかりと繋がれていた。
「さぁて、今日は誰を頂こうかしら?」
千歳は品定めをはじめてひとりの少女の前に跪く。
「アナタにしましょう」
少女の顎を持ち上げた千歳はそのまま少女の唇を奪う。少女は抵抗する素振りも見せない。もう、泣き叫んでも無駄なことを悟ってしまっているのだ。それに、もう千歳に魅了されてしまっている。
千歳は少女の頬に舌を這わせ、そのまま首筋を舐めた。
少女の身体が一瞬苦痛に歪み、そして恍惚とした表情へと変わっていった。
天人[ソエル]は吸血行為[ケトゥール]を行うと同時に、相手を快楽に酔わせる?物質?を与えている。その?物質?はノエルの身体に突然変異を与えてしまう。だからこそ必要性がない限りは死を与えねばならない。
「もう、いらないわ」
少女はまだ死んでいない。
ビクンと少女の身体が跳ね上がり、変化がはじまった。
腕が伸び、脚が伸び、胴体からも腕が伸びた。皮膚の色は褐色に変わり、顔についた五つの目玉が千歳を見据えた。その姿は蜘蛛と人間を掛け合わせたような姿をしていた。
怪物の胴体から伸びた手が千歳の首を絞めようとした。しかし、その手は千歳によってもぎ取られ、大量の血が地面に吹き荒れた。
「美しくない娘[コ]は嫌いよ」
振り上げられた千歳の手が怪物の胴体にめり込む。そして、心臓を握り締め引き抜かれた。
血の滴る心臓を艶かしく見つめた千歳はそのままかぶり付いた。
口から零れる血が千歳の身体を穢し、彼女は高らかに笑った。
作品名:堕とされしものたち 機械仕掛けの神 作家名:秋月あきら(秋月瑛)