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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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おばあちゃんのカレーライス

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 少したつと、カレーのにおいがしてきた。
「アキラ。できたよ」
 おばあちゃんが呼んだので、ぼくは、意地を張って、まだ怒っているような仏頂面でお膳の前に座った。
「さあ、これだってお肉だよ。貝のね」
と、おばあちゃんはすまして言った。そりゃあそうだけど。
 ぼくは、いかにもしぶしぶっていうようにゆっくりとスプーンを口に運んだ。ところが、一口食べると、サザエの歯ごたえがして、味にこくがある。お肉のよりおいしいかも。
 味わううちに、おじいちゃんやおばあちゃんや、海で働く人たちの姿がうかんできて、目の裏がじーんとなった。
 涙ぐんだぼくをを見て、おばあちゃんは、
「おばあちゃんが怒って作ったから、特別辛いだろ」
と、お水をくれた。ぼくは首を大きく横にふった。
「ううん。今まで食べた中で一番おいしい」
「そうかい? それはよかった」
 ぼくは改まっておばあちゃんに言った。
「ごめんね。おばあちゃん。食べ物って、いろんな人の苦労や工夫でできるんだね」
 それからぼくは、ぱくぱく食べてお代わりもした。
 カレーのにおいの向こうで、おばあちゃんが笑顔でうなずいていた。