オヤジ達の白球 36~40話
促された坂上が、投球動作を開始する。
まず軸足(右足)を投球プレートの上に置く。
踏み込むための自由足(左足)を、大きく後方へ引いていく。
ホームベースに向かって半身に構えたまま、体の前でボールをセットする。
その態勢を維持したまま捕手のサインを覗き込む。
サインの交換を終えた坂上が投げ出すため、腕をぐるりと上へあげていく。
「やっぱりだわ。駄目ですね、投球前のその動きでは。
残念ながらあなたは、ソフトボールの投球前のルールをぜんぶ
無視しています」
「その通りじゃ。
おまえさんの準備動作のすべてが、不正投球に該当する。
1番バッターが一度もバットを振らなかったのは、おまえさんの違反投球に
きづいたためじゃ」
1塁で塁審を務めていた審判部長が、坂上の背後へ足を運んでくる。
「俺の投げ方に、何か問題でもあるというのですか?」
「うむ。大ありじゃ。それもひとつやふたつではない。
だから球審をつとめている千佳とわしが、こうしてわざわざマウンドまで
出向いてきたのじゃ」
「投球前のルールはいろいろあります。
おおまかですが、初心者が最初に覚えなければならないルールは、
3つあります。
でもあなたはその3つを、すべて無視しています」
「投球前のルールが3つもある?。
そんなに有るのか、投げる前の取り決めが・・・」
「ソフトボールの投げかたには、ちゃんとしたルールがある。
まずひとつめ。
投球前にプレートを踏むときは必ず、両手を離しておかねばならん」
「えっ、
両手をグローブの中へ入れてボールを握っている状態では駄目なのですか!」
作品名:オヤジ達の白球 36~40話 作家名:落合順平