オヤジ達の白球 36~40話
(いよいよだ。新米投手の、記念すべき第1球目だ)
ベンチで祐介が身体を乗り出す。
ボールを握った坂上の右腕が、ゆっくり、頭上へ上がっていく。
次の瞬間。風車のようにぐるりと旋回した坂上の右腕から、勢いよく
白いボールが放たれる。
ストライクゾーンのど真ん中へ、ボールがうなりを立てて飛んでいく。
(一番自信のあるボールを投げろとサインしたが、
よりによってど真ん中だ!。
まいったなぁ・・・)
ミットを構えていた寅吉の背中をひやりと、冷たい汗が流れて落ちていく。
(いかん。まずいぞ・・・よりによってど真ん中の、腰の高さへ来やがった。
フルスイングされたらそれこそ、ホームランになっちまう・・・)
ズドンと鈍い音を立て、寅吉のミットへ最初のボールが収まった。
「ストライ~ク・ワン!」球場内に千佳の黄色い声が響き渡る。
(やれやれ。振らなかったか。おかげで助かったぜ・・・まずは命拾いだな)
ふわりとした球を、坂上へ投げ返す。
つづいて、2球目のサインの交換がはじまる。
作品名:オヤジ達の白球 36~40話 作家名:落合順平