「美那子」 信頼 三話
何時間か過ぎて異変を感じた秀一郎は目を覚ました。隣で母親が裸になっている。何をしているんだろうと振り返ると、どうやら風呂から出てきたようだった。これからパジャマに着ようとしていた。
そういえばシャワーも浴びずに飲んで寝たから目が覚めて風呂に入ったのだろう。
「ゴメン、起こしちゃった・・・恥ずかしいところ見られちゃったみたいね」
「狭いベッドだから仕方ないよ。朝入ればいいのに」
「うん、そうね。何となくさっぱりしたかったの」
「じゃあ、おれ寝るよ」
美樹は横を向いた秀一郎の背中に自分の胸をピッタリと合わせた。なんか懐かしい匂いと温もりを感じる。
子供の頃こうして抱き合って寝ていたことを思い出した。
「母さん、子供じゃないんだから、離れてくれよ」
「冷たいこと言わないの。こうしているとねあなたが私の息子だって、一番大切な人だって思えるのよ。美那子とはこういうことは出来ないからね」
「美那子に見られたら困るよ。それでなくても母さんと、そのう・・・男女の関係だと疑われているんだから」
「ええ?美那子がそんなことをあなたに言ったの?」
「ああ、最近仲が良すぎるから何かあるって」
「どう答えたの?」
「バカなこというなって言ったよ」
「そうよね。でも秀一郎がこんなことをしていても嫌がらないことはとても嬉しいわ。普通、母親って息子は避けるって言うからね」
「ボクは母さんが好きだよ。綺麗だし、自慢なんだよ」
この言葉は美樹の深い部分を刺激した。涙があふれる。
秀一郎は自分から強いハグをした。
どれぐらい抱き合っていただろう。二人は手を繋いで眠りについた。
翌朝先に目覚めた美樹は布団の中で秀一郎の下半身が盛り上がっているのを見つけた。若いから元気なのだ。
そっと触れてみようと手を差し出したが、止めた。
そしてそんなことをしてはいけないと自分に言い聞かせた。
美那子が起きてこないうちに着替えて部屋を出ないとマズいと思い、台所へ行った。
しかし、美樹より先にそこには美那子が座っていた。
「お母さん、お兄ちゃん知らない?夜話したいと思って部屋に行ったら居なかった」
「うん、お母さんね昨日酔っぱらって歩けなくなったから、秀一郎に部屋まで運んでもらったの。それで・・・」
「まさか一緒に寝てたの?」
美那子の顔をまっすぐに美樹は見られなかった。
作品名:「美那子」 信頼 三話 作家名:てっしゅう