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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「美那子」 信頼 三話

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美樹は夫から美那子が自分の子供じゃないと言われたときになぜわかったのか尋ねた。彰は不倫していた相手に自分の娘が誰にも似ていないと話したことで、それは調べた方がいいと諭されたことがあった。
別にそんなこといいと思っていたが、正式に離婚できることがあるとするなら娘の父親が違うという事は絶対的な理由になると考えたのだ。

美那子に知られないようにDNA鑑定を依頼してその結果は彰を驚かせた。まさかと感じていたことが真実になったからだ。
美樹は三枝に言われた楽観的性格から夫がそこまでやらないだろうと甘く見ていた。
子供たちに言える理由ではなかったので、夫にお願いをして自分の不倫が知れたことだけにしてもらおうと話し合った。

今までよりもっと美樹は三枝と会うという事がこれで不可能になった。
メールアドレスも消去し、しばらくして携帯電話も解約した。
家にいては気分が優れなくなるばかりだと感じて仕事に出ようとハローワークへ足を運ぶ。
派遣会社に登録して、デパートのマネキンとして仕事をスタートさせた。

持ち前の容姿を恃みに採用してもらえたような職場だったが、仕事は楽しく感じていいた。そしてバツイチだという事がわかると言い寄ってくる男性の数が急に増えた。今はそちら方面を自粛しようと考えていたので、断る日々が続く。

美樹は誕生日が来て50歳になった。
嬉しいはずの日もなんだか少し憂鬱に感じられた。
このまま歳をとって体のラインも崩れて、誰からも声を掛けられなくなっておばあちゃんになってしまうと考えると悲しさと切なさで涙が出てきた。

子供たちにケーキでお祝いをしてもらったが、今は一人台所でお酒を飲んでいる。
秀一郎がそれに気付いて前に座る。

「どうしたんだ一人で飲んだりして。言えば付き合ったのに」

「うん、50になったでしょ。ちょっと考えちゃって」

「母さんはそんな歳に見えないから気にすることないよ。デパートだって人目につく職場だから若くいられるし、大丈夫だよ」

「ありがとう。じゃあ付き合って。飲むから」

「明日仕事なんじゃないのか?」

「ううん、お休み」

美樹はピッチを上げて飲み始めた。
いつもように自分が判らなくなるほど酔っている。秀一郎は抱きかかえて部屋に連れてゆく。いつかの時と同じだ。

「ねえ、秀一郎」

「うん、なに?」

「一緒に寝て」

「ええ?母さんと」

「うん、寂しいの。耐えられない・・・」

ベッドへ寝かせると美樹は手を伸ばして誘う。
じっと見つめる秀一郎は服を着たままならいいかと思い横に寝た。
母親は直ぐに寝息を立てて眠りについた。
秀一郎は横を向いて寝ようとする。