「美那子」 禁断 二話
「タイプとか言う基準で彼を選んだりはしないの。何というか、直感というか、ビビット来るかどうかっていう事が大きいの」
「へえ~そう言うものなんだ女の子って。じっくり考えて決めるんだと思っていたよ」
「そういう人も居るかも知れないけど、一目見てスキって感じないと無理かな、私は」
「結婚相手と言うなら別なんだろうけど、恋愛という意味ではそういう感覚を大切にしたいって思うんだよね?美那子ちゃんは」
「そういう事。ねえ、それより私の友達で最近失恋した子がいるんだけど、その子と付き合ってあげてよ、ダメ?」
美那子が言い出したことに少しびっくりした優斗はどんな子なのか聞いて会うだけならいいよと返事をした。
失恋した友達とは静子のことだ。中学一年から交際していた二歳年上の彼と夏に別れてしまった。相手に浮気されてそれが許せなかったと聞かされて、兄の友達を紹介して欲しいと言われていた。
高校生になって静子は凄く大人っぽく変わっていた。身体の関係が女を磨いたのであろうか。美那子はそういう部分も気になっていたから美幸に聞きたいと思っていた。兄が交際を始めるかも知れないので連絡は遠慮していた。
年末に静子は初詣を理由に優斗と会いたいと美那子に伝えてほしい旨を電話してきた。もちろん優斗が断ることはなかった。自分は誰と行こうか考えていた。
静子は兄と面識があるから美那子は兄を誘おうと思った。
「ねえ、お兄ちゃん。静子に彼を紹介するので優斗さんという人と初詣に行くんだけど、一緒に来てくれない?」
「ええ?なんでおれがゆくんだよ」
「だって、もし静子が気に入ったらカップルになるでしょ。一人じゃ寂しいって感じるから」
「すぐに二人きりになるっていうわけでもないから気にしなくていいんじゃないのか」
「私とは行きたくないっていう事なの?」
「違うよ。別にお前が一人でも気にすることなんかないって言っているだけだよ」
「美幸さんとの約束でもあるの?」
「ないよ」
「じゃあ、行こうよ」
秀一郎はしぶしぶ承知をした。美那子を避けたいと思った訳ではない。実は母親と行く約束をしていたのだ。しかし、それを美那子には言えなかった。
美樹は今回だけは一緒に行くと言えなかったので、秀一郎に美那子と行くように話した。
年が明けて一月一日バブル景気が終わろうとしている平成4年がスタートした。
作品名:「美那子」 禁断 二話 作家名:てっしゅう