Aprikosen Hamlet ―武蔵野人狼事変―
十三宮聖「…ちゃん! 起きて下さいっ!」
ここは…そうか、さっきのは夢…か。「グール」やら「人喰い族」やら、随分と疲れる夢を見てしまったものだ。大森貝塚にある、私達の自宅。いや、別に「貝塚の地層に住んでいる」とかそういう意味ではなく、ただ住所に遺跡の名称が含まれているだけだ、多分…。
「おはよう、姉さん。昨夜は、姉さんと津島様が『食屍鬼』の話をしていたのを夢で思い出して、無駄に疲れたよ…そう言えば、あの時に見掛けた少年兵…確か天満さん達だっけ? あの子達、今頃は元気に生きているのかな? もう、何年か経つと思うけど…」
十三宮聖「あら、奇遇ですね…天満ちゃんも食屍鬼も、皆様は元気に戦ってらっしゃいますよ。殊に御台場は、敵方の猛攻に晒(さら)されております。それから、この家は現在、食人種の大群に包囲されております…」
「…あ?」
十三宮聖「仁(めぐみ)と入谷(いりや)様が、大森山王の食人種を迎え撃っておりますが、そう長くは持ち堪(こた)えられないでしょう…私達は、大森駅から平和島に向かい、東京湾の同盟軍と合流致します。電気などはほとんど止まっておりますので、急いで下さい!」
「分かった…って、ちょっと待って。停電しているって事は、鉄道も使えないんじゃ…?」
十三宮聖「駅の制御と電線に雷撃を放ち、誤作動で列車を走らせます。あとは、最近話題の『重力波』でどうにかします!」
「それで、どうにかなるような問題なのだろうか…?」
十三宮仁「はぁ…疲れた、敵さんの数が多過ぎるよ!」
入谷枯桐(いりや ことう)
「脱出するぞ! 急ぐのだ!」
十三宮聖「さあ、早く!」
「りょ…了解!」
作品名:Aprikosen Hamlet ―武蔵野人狼事変― 作家名:スライダーの会