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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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巡り合う街の不確定未来 探偵奇談16

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バスが到着して、乗降口が開いた。

「須丸くんも、気を付けて帰ってね」
「ん。また明日」

扉が閉まります、とアナウンス。扉の前で手を振ると、瑞が降り返してくれる。いつも通りの別れ。いつも通りの、はずの別れ。

「…」

バスが動き出す。郁はバスの扉に両手をついて停留所に残された瑞を見る。降りなきゃ、という思いが突き上げてくる。

(…なんでだろう)

だって、いつもの瑞じゃなかった。降りて、今日はどうしたのって聞かなくちゃいけない気がする。
どうしてそんな不安そうにしてるの?
寂しそうにしてるの?


どうしてあのとき、手を――


でももう遅い。瑞を残して、バスは進む。

(…なんで?)

大好きなひとと過ごした最高の時間だったのに。いま、涙がこみあげてくるのはどうしてなんだろう。悲しいのでも、悔しいのでもない。ただ、あの場所に瑞を一人で残してしまったことが、どうしても心に引っかかる。残ればよかった。もう少し、話をすればよかった。どこか不安そうに笑う瑞をぎゅっと抱きしめてあげればよかった。どうしてそんな風に思うのだろう。

だって明日学校でまた会えるのに。ちゃんと会えるのに。

(今すぐ会いたい。もう、会いたい)

暗い窓に映る自分の髪に光るピンの煌めき。夜空の星のような繊細な光。


前髪を切らない理由が、ひとつ増えた夜だった。






END
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