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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「美那子」 距離 三話

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「解ったよ。行くけど話すだけだよ」

「うん、秀一郎さんに嫌われたくないから解っているつもりよ」


美樹は美那子が秀一郎と三人で会った話を聞いていた。

「お兄ちゃんに、デートしなさいって言ったんだってね」

「うん、そう。なかなか自分で誘わないから私が言ってあげたの」

「辛くなかったの?」

「ええ?なんで?お兄ちゃんと美幸さんはお似合いよ。きっと仲良く出来るって思う」

「お母さん、美那子は成長したなあって感じた。今だから言うけどあなたの思いは前から知っていたのよ。秀一郎は本当のところは迷っていると思うの。けど、あなたから言われて重い腰を上げた。これからどうなってゆくのかは知らないけど、兄妹はいつまでも仲良くしていて欲しい」

美那子はもう目に涙をためていた。少し間があって答えた。

「お兄ちゃんのことは小さい頃から好きだった。兄妹という事が恨めしかった。高校生になってやっと気付いたの。私だけのものじゃないって。美幸さんが現れて、自分と少し距離を置くいい機会だと考えるようになったの。私にも素敵な彼が現れるかも知れないし、今は美幸さんと仲良く出来れば私も嬉しいって・・・本当よ、お母さん」

もう泣きだした。
美樹はギュッと抱きしめてこの子の幸せを決して壊してはいけないと強く誓った。

こんな話を母と美那子がしていただなんて想像もつかなかった秀一郎は重い足取りでしかし、一抹の期待も寄せるスケベ心も無くはなかった。
美幸はこと恋愛に関しては経験済み。純真な秀一郎の気持ちを揺らすことぐらい弁えていた。

世の中は自分が考えている通りには運ばないという事が多々ある。
家について美幸が玄関のかぎを開けようとキーを入れると、既に解除されていることに気付かされた。
母親が出掛ける時に締め忘れたのかと思い、中へ入ると奥から母の声がした。

「美幸?お帰りなさい。あら?お友達と一緒なの、これは失礼したわ。どうぞ上がって」

「お母さん!どうしたの?用事で出掛けたんじゃなかったの?」

「うん、先方さんの都合が悪くなって帰って来たのよ。都合悪かったかしら?」

「変なこと言わないでよ、もう。ああ、こちら永田さん。旅行で一緒になった美那子ちゃんのお兄さんなの」

「初めまして、美幸の母です。そう、あの美人って言っていた美那子さんのお兄さんなのね。兄妹そろって美男美女ね。良かったじゃないの美幸」

秀一郎は内心ほっとした。これでヤバいことにはならないだろうと思ったからだ。