オヤジ達の白球 26話~30話
「フルボトルを3本!・・・この野郎め。人の弱みに付け込みやがって。
まぁいい。仕方ねぇ。坂上のためだ。
山崎の12年物フルボトル3本で手をうとうじゃねぇか」
「零細企業の経営者は、やっぱり決断が速い。
しかし。一度しか言わねぇぞ。耳の穴かっぽじいて、よく聞けよ」
2人が見おろしている中。坂上が壁の前から、よろよろと立ち上がる。
(おっ、立ち上がったぞあいつ。まだやる気か・・・)
投球練習を再開すると思いきや、がっくりとうなだれたままの坂上が
土手をのぼり、トボトボと足を引きずりながら帰っていく。
「なんでぇ。投球を再開すると思いきゃ、帰っちまうのかあの野郎は。
スタミナもないが、粘りぬく根気も足らねぇな、あの単細胞やろうは。
まぁいい。あいつのことは放っておこう。
じゃいい球を投げるためのポイントを説明するから、聞いてくれ」
「待ってくれ。いまメモを取る。だから猿にもわかるように説明してくれ」
「猿はソフトボールなんかしないだろう!」
「わかりやすく説明してくれという言葉の綾(あや)だ。
そのくらいのことは、おまえさんも知っているだろう」
「本気になって怒るな。そのくらいのことは俺でもわかる。
じゃ超初心者でも理解できるように、わかりやすく説明するから
メモを取ってくれ」
「ありがてぇ。世話になるぜ。恩に着る」
岡崎が北海の熊の目の前でメモ帳をひろげる。
さぁ教えてくれと、シャープペンシルの先をぺろりとなめる。
(31)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 26話~30話 作家名:落合順平