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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「美那子」 距離 一話

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「ちょっと聞きたいことがあるの。入ってもいい?」

「いいよ」

中に入って美樹はベッドに腰かけた。

「ねえ、美那子に悪いと思って美幸さんとのこと言わなかったんじゃないの?」

「何言っているんだよ、母さんまで」

「隠さなくてもいいのよ。美幸さんがあなたのことが好きになったのなら、いい機会じゃない。美那子から少し距離を置くこともそろそろ必要なんじゃない?そうは思っていないの、もしかして?」

「おれたちは兄妹だよ。距離を置くとか言う問題じゃないだろう。距離を置くなら母さんたちだろう!」

「誰と距離を置けって言うのよ。変なことを言うのね」

「とにかく美幸さんとは付き合わないから。美那子と友達になることは応援するけど、ハッキリと言っておれの好みじゃないしね」

「まあ、美幸さんってスタイルもいいし、美人じゃないの。何言っているの、好みじゃないだなんて。それに女性は付き合ってみないと解らない部分もあるのよ。どうしても合わないと思えばやめればいいだけ。とにかく三人で会った後は二人で会いなさいね」

「母さんはおれと美那子を引き離そうと考えているわけ?」

「そんなことするわけないじゃないの。何を言っているの。あなたも大人になったのだから、そろそろ恋人を見つけて欲しいと思うだけよ。向こうから話しかけてきたのなら渡りに船じゃないの。美那子と同じ学校ならお母さんも安心できるし」

「三人で会ったらそれで終わり。もし次も会うなら三人でだよ」

「仕方のない子ね、誰に似たのかしらそういうまじめな部分は」

「母さんじゃないの?もしかしてまじめじゃないって思っている?」

「言うわね。言っておくけど三枝さんとは同級生というだけだから誤解しないでね」

「母さん覚えてないみたいだけど、旅行で酔っぱらって部屋に抱っこして連れて行った時、誰かとおれを間違えてキスしようとしたんだよ。首に手を回してギュッと・・・」

「まあ、恥ずかしいことしたのね。いやだ、もう。ゴメンね」

「イヤだじゃないよ。父さんとそういうことしてないみたいだから、あとは三枝さんだと確信したよ。違う人だったらもっと驚くけどね」

「バカ!さっき言ったでしょ。学生の頃は別だけど三枝さんとは同窓会で再会しただけの関係なのよ。違う人って誰よ、そんなにお母さんのこと疑うの?」

「じゃあなぜあんなことしたんだよ」

美樹は苦し紛れにとんでもないことを言った。

「秀一郎が可愛いって思ったからよ。前に抱きついたのもそう」

何を思い出したのか秀一郎は黙ってしまった。
ここまでウソを言う母親に別の意味で必死に何かを守ろうとしているんだと感じた。