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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「美那子」 浮気 二話

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美樹は芳之が妻に今回のことを話したことが不安に感じられた。
余計な詮索かもしれないと思いながら、自分たちは最大の注意を払って付き合わないととんでもないことになると思うからだ。

「芳之さん、何故私たちと飛行機が同じになることを奥様に話されたの?」

「だって、妻のコンビニでバイトしていたから良く美那子ちゃんのことは聞かされていた。自分が旅行に誘われたことも聞いているよ。だから偶然飛行機が一緒になると言ったらお金を渡すように頼まれた。それ以上も以下もないよ」

「違うの、何故美那子たちと旅行に行くことをあなたが知っているのかという疑問を奥様が持たれなかったのかって心配するの」

「そう言われればそうだけど、お前とは同級生だと知っているからな。それに家に電話してきたのはおまえの方からだぞ、言うならそっちの方が疑問に思われたんだぞ。娘が電話に出たから良いようなものの」

「何だか周りに気付かれそうなことばかり心配するようになったから、精神的に不安に感じる。こんな気持ちだともう続けられないってなってしまうかもしれない」

「おいおい、それは無いだろう。帰ってからゆっくりと話そう。今は余計なことを考えずに家族旅行を楽しめよ」

芳之の気持ちの中に美那子の存在が強く入っていることは予想がつく。
美樹はいまさらに自分のしたことを深く反省した。
モヤモヤする気持ちを抑えて席に戻ると、秀一郎が小声で話しかけてきた。

「ねえ、母さん。あの人どういう人なの?」

「ええ?どういうって同級生というだけよ」

「なんか真剣に話していたんじゃない?」

「久しぶりだったから話が弾んだだけ」

「ならいいけど。余計な心配しちゃうよ」

「余計な心配って・・・なにそれ?」

「顔に書いてあるよ」

美樹は秀一郎が言った顔に書いてあるという言葉の意味をすぐに悟った。
あの自分がギュッと抱きしめた「事件」から、美那子が言うように秀一郎の自分を見る目が変わったようなところは否定できない。

お金欲しさに母親の顔色を伺うという息子はいるだろう。
息子は自分を母親としてだけではなく女としても見るようになっているのだろう。
そこには性欲を満たすという質のものではなく、妹と比べることによって女という存在そのものに対する不思議さというか、接し方というか、考え方というかを知りたいとの思いなのかも知れない。

飛行機は仙台空港に到着した。
荷物を受け取って、外に出ると三枝は「これで失礼します。楽しい旅をしてね」と言い残して手を振りながら去っていった。