オヤジ達の白球 11~15話
そんなかれらの楽しみが、業界が作ったソフトボールだ。
ナイター設備の整った球場での試合は、週末における最大の楽しみだった。
誰に遠慮することなく、思う存分、自分を発散できるからだ。
土木業界にも狙いが有った。
暴走しがちの若い世代を、コントロールしたかった。
酒に走らせるより、スポーツで体力を浪費させた方がリスクが少ない。
チームプレーはまた全体の連帯感を生む。
上下関係や、集団で何かを成し遂げることの意味合いを試合を通して
理解させることもできる。
残党たちで作ったソフトのチームに、そうしたメンバーたちが戻って来た。
声をかけてきたのは、地元でチーマーをまとめてきた若頭。
チーマーとは、1990年代に流行した不良のスタイル。
その前の世代に流行したヤンキーや暴走族とは異なる。
アメカジ(アメリカンカジュアル)や古着を身に纏ったファッショナブルな
スタイルが最大の特徴だ。
その後ファッションは、ブラックを基調にしたギャング系に変っていく。
彼らは悪知恵が利く。目的を達成するためにはどんな手も使う。
道徳観のないヤツが多い。
頭がキレるタイプの場合、社会へ出たら、正攻法でいくのが一番効率的だと
気がつく。
しかし。いざ大きいビジネスとなると、ある程度のリスクだったら普通やらないような
手口を使ってしまうこともある。
そのようにして会社の中で、成長していくヤツも居る。
酔ってくると話が物騒になる。
『●●が帰ってきたぜー』などという会話が、ふつうにはじまる。
いったい何処から帰って来たんだ、という話になるが、あまり関わらないほうがいい。
警察からの逃れるため海外へ逃亡していたとか、懲役へ行き、刑期が満了して
シャバへ出てくるという話に、きっとなるからだ。
あたらしく誕生したチームには、こうしたヤンキーやチーマーたちがごまんと居る。
それが北海の熊が去年まで所属していた、残党たちのソフトボールチームだ。
(16)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 11~15話 作家名:落合順平