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オヤジ達の白球 11~15話

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 民事再生受理1週間後。説明会を開いたところ、200名以上の
債権者が集まった。
血気盛んな業者も多く、紛糾して収集がつかず。翌週もう
一回行うことになった。
罵倒、怒号の限りを浴びながらも、理解してもらうまで話し合いを
重ねる日々がつづいた。
すべての清算が済めば解放される倒産と違い、民事再生法は事業も代表者も
継続する。
このときの思いを「全身に包帯をぐるぐる巻にした重症患者が、なんとか自力で
会社を建て直している感じだった」と3代目の社長は振り返っている。
 
 民事再生法下の会社は、銀行からの融資を受けられない。
今までの取引先も離れていく。
申請前は40億あった完工高が、僅か1億まで落ちこんでいく。
四面楚歌の中。厳しい資金繰りをこなしながら、会社は第一回目の
弁済をおこなう。
以後。10回にわたり弁済を行っていく。

 ピークの時には70人いた社員が、わずか4人になった。
その4人の中に、北海の熊が居た。
長く居た社員たちが次々と去っていく中。熊は迷わず社長と運命を共にした。
別に深い考えが有ったわけでは無い。
自分にソフトボールの投手という新しい出会いを作ってくれた会社と社長に
深く感謝をしていたからだ。
ただそれだけで、会社と運命をともにすると最初から決めていた。

 民事再生から5年。会社が弁済を完了する。
1億前後と低迷していた受注が、わずかずつだが上昇していく。
そうなるとかつての社員たちが、ひとりふたりと会社へ戻って来る。

 熊は会社の先行きを考えるほど、斬れる頭を持っているわけでは無い。
もとどおりの重機のオペレーターに戻る。
冬になると東北地方や北海道から出稼ぎにやってくる季節労務者たちを
まとめながらあちこちの現場を転々とする生活が、熊に戻って来た。

 そんな暮らしが落ち着いてきたころ。
かつてのライバルから、ひさしぶりの電話がかかってきた。

 『熊か。ひさしぶりだな。
 実はよ。土木リーグの残党たちであたらしいチームを作った。
 だが、優秀な投手が居ない。
 どうだ。おれたちのチームへきてもういちど、いっしょに
 ソフトをやらないか』


(15)へつづく