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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トラブルシューター夏凛(♂)1 堕天使の肖像

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 というオペレーターの声が聞こえてきた。
「あのぉ〜、人が気絶しちゃったんだけどぉ」
「……また、夏凛さんですか?」
 少しため息交じりの声が返ってきた。人を気絶させてたりして度々救急に電話をかけている夏凛はオペレーターに覚えられてしまっているらしい。
「うん、今日はツインタワービル四六階の情報屋真のオフィス」
「すぐに救急車を向かわせます」
「じゃあ、よろしくね」
 電話を切った夏凛は真のいる部屋へと向かった。
 部屋の中はプラグやコンピューターだらけだ。部屋の壁はねずみ色の金属でできており、部屋中を無数のプラグや何に使うのかまったく見当のつかない機械がゴロゴロとしている。
 部屋の真ん中にはプラグを全身に繋がれた男が座っている。その男は変な機械を頭から目元まですっぽりとかぶっていた。
 夏凛はその男に声をかけた。
「真くん、遊びに来たよ〜ん♪」
 返事がない、その代わりに意味不明な言葉が返って来た。
「な、なんだとぉー! 作者がへっぽこぴーな為ツイン’ズ途中打ち切りだとぉーっ!!」
 真はいつも通りトリップの真っ最中だった。
「真くぅ〜ん」
 夏凛は甘えた声を出してみたが、やはり真には届かないようだ。まだ真はトリップを続けている。
「燃え上がれ、燃え上がれ、燃え上がれ、なんとか〜♪ って本当に燃え上がったら大変なことになるだろ!!」
 真は頭にかぶった装置によって、帝都のありとあらゆる情報を瞬時に検索し映像として取り出すことができる。今もどこかにアクセスして情報を見ているに違いない。
 トリップしている真を無視して夏凛は自分の来た理由を勝手に話し始めた。
「え〜とねぇ、昨日話した料金の件だけどぉ」
「半額だ、それ以上は負けられんな」
「な〜んだ、やっぱり話は聞いてるのかぁ」
「当たり前だ。私の頭脳を持ってすればいくつもの細かい作業を同時に進めるなど容易いこと」
「料金は正規の額でいいから、ホシを見つけたら直ぐに連絡ちょーだい、OKだよね?」
「それはいいが、なぜマフィアの男、それも小者などを探しているんだ?」
 夏凛は真にマフィアの男を探すように依頼をしていた。それはなぜか?
「ダメだよ、トラブルシューターは依頼人の許可がない限り依頼内容を人にペラペラしゃべっちゃいけないんだよぉ〜」
「そうか、なるほどその男が帝都美術館の絵画を盗んだわけだな……ほうほう、それで帝都に忠義を誓ってるマフィアのボスが激怒したわけか……」
「私が言わなくても、勝手に調べてんじゃん」
 情報屋『真』の実力を垣間見た夏凛だった。

 三日前、帝都美術館の倉庫に厳重に?封印?され秘密裏に保管されていた絵画が盗み出された。
 この事件はまだ報道陣の耳には届いていない為ニュースにはなっていないが、もし、このことが世間一般に知れ渡ることとなれば大騒ぎになり、新聞やTVなどは他のニュース枠を割いてこのニュースを挙って取り上げるに違いない。なぜなら盗み出された絵画は三番目に高い危険度?S?に指定されている魔導具だからだ。
 盗み出された絵画の題名は『反逆者』、古の時代の『魔術師』(神という説もあるが定かではない)が描いたもので、天使(駄天使=悪魔)の絵が魂までも模写してある。
 なぜこの絵画が危険度Sに指定されているかというと、描かれた天使がその絵から現実の世界へと出ることができるからだ。

 絵から出てきた天使は世界に混乱をもたらすと言われている。過去にも何度か絵から出てきた天使によって多くの命が奪われたという。
 今は大魔導士ヨハン・ファウストによって厳重に封印され天使が外に出ることはないが、もし、封印が誰かの手によって破られることがあれば……。
 その絵画がマフィアの男に、それも下っ端の男に盗み出されるという大事件が起きたのだ。絵画を盗み出すように命令したのはマフィアのボスではないが、マフィアの下っ端独りにできる犯行ではないことは明確だ。つまり、その男はマフィアを裏切り、別の組織なりに命令されて絵画を盗み出したに違いない。
 この帝都の街は女帝と呼ばれる人物が治めている。そして、その女帝を教祖として神を信仰する宗教がこの帝都には存在する。マフィアのボスは神を信仰していて、そして、教祖である女帝を敬っている。
 帝都美術館は帝都政府が運営しており、そこには多種多様、異種異様なモノが数多く展示されている。そして、その展示品は全て?女帝?所有の物となっている。
 つまり、マフィアのボスは、絵画を盗んだ奴が組織を裏切った上に女帝所有の絵画を盗んだことに激怒したのだ。そして、夏凛の所にマフィアのボスから依頼があった。
「……なるほど……盗んだ男を見つけ盗まれた絵画を取り戻す……これが依頼か……」
 真はまだ、トリップ中だった。
「あのさぁ〜真くぅ〜ん?」
「何だ?」
 夏凛に呼ばれた真は一瞬にしてコッチの世界に帰還して来た。
「ボクの仕事の依頼内容なんてどこから調べてるのぉ?」
「企業秘密だ」
「……っケチ」
「『……っケチ』とはなんだ、お前だって仕事の依頼内容教えてくれなかっただろ!」
「でも、結局全部バレちゃったじゃん!」
「ふっ……知るかそんなこと」
「……なんだよ、その態度……フンだ!!」
 夏凛は女の子のように可愛らしく顔を膨らませて顔を赤らめた。
「そんな顔をしても私にも通用しないぞ」
 ――今、真は確かに『そんな顔を』と言った。真は頭から目元まで機械をかぶっていて夏凛の顔など見えないはずだ。しかし、真には見えていた。その理由は、真のかぶっている機械とこの部屋に浮かんでいる小型カメラに秘密がある。
 真のかぶっている機械は脳に直接情報を送り込む為の機械で、この部屋に浮かぶカメラの映し出す映像に瞬時にアクセスすることが可能だ。
 このカメラは真専用のカメラなのだが、彼はこのカメラ以外のカメラが映し出す映像も瞬時にアクセスすることができる。アクセスできるカメラはネットワークに接続されているカメラにかぎられているのだが、カメラ以外のものでもネットワークに繋がれていれさえいればどんなものにもアクセスすることが彼には可能だった。
 夏凛の機嫌はまだ治っていないらしく彼はまだ膨れっ面をしていた。それを見た真は少しため息交じりで彼に言葉をかけた。
「いい加減にしろ、子供じゃないんだから」
「ど〜せ私は子供ですぅ〜」
 夏凛は可愛らしくあっかんべーをして見せた。
「確かにそういう所が子供だな」
「あっ、言ったなぁー」
「最初に自分で子供だと言ったんだろう」
「自分で言うのはいいの!」
 真は夏凛の言葉に深く肩を落とした。
「もう、用は済んだろう。さっさと帰れ」
「ハイハイじゃあね、バイバイ」
 夏凛は真に背を向け、片手を上げるとこの部屋を後にした。
 夏凛のいなくなった部屋からは、
「……な、なんだとぉ〜! 大魔王ハルカゲーム化だとぉ。メディアミックスかぁぁぁっ!!」
 そういう意味不明な真の言葉が部屋にいつまでもこだましていた……。