デラックスマン
デラックスマン-2
(そろそろ頃合か?)
10年後、ダーク星人は再び地球にやって来た。
(デラックスマンはどうだ?)
地球人に姿を変えたスパイをジョンの身辺に送り込む。
「ジョンさん、帰りに一杯やって行きませんか」
「ありがとう、でも今日はまずいんだ……また誘ってくれよ」
どうやら今でも記念日責めに会っているらしい。
しかもジョンは相変わらずの営業マン、同期は皆ヘッドハンティングされたり管理職になったりしているというのに……。
とぼとぼとオフィスを後にするジョンを見送って、飲みに誘った若い同僚たちは噂しあう。
「すっかり尻に敷かれっぱなしみたいだよな」
「そうそう、小遣いもほとんどないみたいだぜ、こないだ昼飯一緒だったんだけど、財布の中は小銭ばっかりでさ」
「あれじゃぁ……」
「そうだな、一生しがない営業マンだな」
「ああなりたくないもんだ」
「まったく……」
『デラックスマンはすっかり力を失っています、侵略するなら今です』
スパイからの報告を受けて母船UFOからダーク星軍の輸送機が続々と地球に降り立った。
地球のいたるところで各国の軍隊がこれを迎え撃つものの、ダーク星軍の圧勝続き、このままでは地球が……。
「あんたたち! いい気になってんじゃないわよ!」
突如現れたヒーロー……いやヒロインにダーク星軍は色めき立つ。
「何を小癪な、やっちまえ!」
何千と言う戦闘員が一斉に襲い掛かる。
「後悔することになるわよ! デラックス・ハリケーン!!!!」
高く掲げた右腕をグルグル回すと旋風が起こり、それは見る間に大きくなって風速100mを遥かに越える凶暴なハリケーンとなった。
その威力はデラックス・トルネードの比ではない、あっという間に戦闘員は紙ふぶきのように宙に舞い、輸送機は横転を繰り返して完全に破壊されてしまった。
既に虫の息の隊長が呻く。
「げふっ……強い……強すぎる……お前は一体……」
「あたしはアニー、またの名をデラックスウーマンよ、あんたたち、あたしを怒らせない方が利口だったわね」
その時、デラックスウーマンの左腕に装着されたデラックス・ホンが鳴った。
「ハロー、あ、ジョン?……そうなの、今、ダーク星人をやっつけてるところ……うん、ちょろいものよ……そうね、ここはもう終わりだけど、あと何箇所か回らないといけないから帰りは遅くなるわね……うん、お食事してる暇はないの、帰ってから食べるわね……うん、エネルギー使うから力のつくものをお願い、そうね、ガーリックとスパイスを利かせたステーキがいいわ、そうそう、デザートも忘れないで、○○のカップケーキを買っておいてくれる? 今日はダイエットの心配しなくていいから……あと、お掃除をお願いね、お洗濯も、ちゃんとウールは別にして、レースのついてるのはネットに入れるのを忘れないで……その後子供たちを寝かしつけておいて頂戴、寝る前に本を読んであげるのを忘れないでね、それから……」
延々と続く電話の最中、隊長は最後の力を振り絞って本船に連絡を取った。
『デラックスウーマンの強さはデラックスマンの比ではありません、その上図太いです、地球侵略は永遠に不可能です……ガクッ』
連絡を受けた本船は大急ぎで他の部隊を引き上げてダーク星に戻り、二度と地球を狙うことはなかった。
え?生き残って取り残されたダーク星人?
彼らはいくつもの小さなコミュニティを作って暮らし、今でもひそかに地球征服を目論んでいる。
世界中に点在するチャ○ナタウン、コ○アタウンがそれである……。