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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「美那子」 接点 二話

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コンビニの就業前はバックルームで社是を読まされる。
店長か代理の人と一緒に声を出して読み上げる。そのあとは接客五大用語を大きな声で礼を交えながら行う。そして店に出て商品の棚だしと、清掃、やがてレジ打ちも覚えさせられる。

美那子は高校生とは思えないほどの容姿と愛想の良い笑顔が気に入られて、経理担当の千佳と仲良くなっていた。いろんな話の中でお互いの家庭の話題に触れてゆく。
自宅で夫の芳之に美那子のことを話した。

「あなた、あのね最近入ったバイトの女の子がいてね。永田さんって言うんだけど、すごく可愛いの。愛想も良くてね、しっかりとしている。世の中にあんな子がいるんだと思うと、ご両親が羨ましいって気持ちになるの」

「ふ~ん、そうなんだ。なんて言った?名前」

「確か、永田美那子ちゃん」

まさか!芳之は美樹から娘の名前を聞かされていた。美那子という響きに間違いは無かった。
今度会った時に聞いてみようとこの時はこれ以上妻との会話に参加しなかった。
芳之は美樹を誘った一年前から一月に一度逢瀬を重ねていた。まだ女であった美樹にとって安全な日が来るタイミングで楽しんでいた。

48歳になって初めて喜びを感じさせてくれた芳之とのデートは絶対に夫に知られてはいけない。もちろん子供たちにもだ。月に一度外に出る理由を考えた。それは、趣味で集まるカラオケサークルだった。
カラオケはレーザーディスクから通信カラオケに代わって急速に普及していた。大人の社交場としてカラオケ喫茶もあちらこちらで開店して、美樹は近所の歌が好きな仲間と時々出掛けていて、夫も知ってはいる。

ただし、月一度の集まりというのは嘘だった。集まってはいるが美樹は参加していなかった。平日だったことと夫に興味が無かったことが幸いした。
いつものラブホテルに入った美樹は芳之から信じられない話を聞かされる。

「前に話したことがあっただろう?妻が新しくコンビニを手伝うっていう話」

「うん、聞いたよ。それがどうしたの?」

「バイトで採用した女子高生の一人がね、永田美那子って言うんだ。同姓同名で年齢も同じで違う人だとは思えないんだが、娘さんからバイトのことは聞いているの?」

「ええ?それって本当の事なの!」

「ああ、妻は経理と人事担当だから嘘なんか言わないよ」

「信じられない・・・美那子がバイトをするだなんて」