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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「美那子」 秘密 三話

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母親が部屋を出て行ったあと美那子は兄の部屋に入った。

「お母さんが来て、お兄ちゃんとのこと聞かれたよ。家庭訪問の時に先生からみんなが噂していることを聞かされたんだって。公園のキスも、ほら見られたでしょ、あの話もされた」

「お前の学校では噂になっているから気になっていたけど、先生までが家に来て母さんに話したとなると厄介だな。気をつけないとダメだな」

「うん、一応私が冗談でチュってしたと答えておいた。お母さんは信じるって言ったけど、どうだかわからない」

「おれには聞かないのかな?母さんは」

「聞かないと言ってたよ」

「そうか、これからも普通にしていないといけないな」

「そうね。お母さんには智之さんとは付き合わないって返事した」

「何か言ってたか?」

「別に。決めたのならいいんじゃないのって言ったぐらい」

「変に気を回さなければいいけど」

「大丈夫だと思うよ」

そこまで言うと美那子は秀一郎に抱きついた。
目を閉じると兄の唇がそっと重なる。
兄の手が背中に回り、ゆっくりと撫でてもらう。
次に髪を撫でてもらう。最後は頬に触れて終わり。

心臓がどきどきして来て身体に電気が走る。自分の部屋に戻って指でまさぐらないと気持ちが収められない。
兄の手がもし胸の先っぽに触れたら今までの我慢は破られる。それは自分が兄のカタくなっているだろう部分に触れても同じことだ。

美那子と同じように秀一郎も部屋でカタくなった自分自身を慰めないと気持ちが収められない。
母親が見たら驚くような行為が家の中で毎日のように繰り広げられていた。
しかし、お互いの気持ちに重い鎖が掛けられていて、そこから先へは微塵も進まない。進めようとしない。

美那子と秀一郎は本当に仲の良い男女になっていた。
もし体を許したら美那子の心の中に新しい感情が醜い大きさに膨れ上がる。
秀一郎も同じかも知れないが、美那子の方が強いだろう。
それを嫉妬と呼ぶが、自分だけが愛されたいと思う独占欲といった方がわかりやすい。

女性が子宮で考えると言われるゆえんだろう。
美樹があの夜最高のカタさになった三枝の男性を受け入れた瞬間から、美那子の持って生まれた定めが決められたと言える。