第七章 星影の境界線で
〈第六章あらすじ&登場人物紹介〉
===第六章 あらすじ===
鷹刀一族と藤咲家は、囚われの身のメイシア・ハオリュウの父親である藤咲家当主を救出するために手を組んだ。初めは貴族(シャトーア)に抵抗のあったリュイセンも、ルイフォンがメイシアと接したことによって変わったのを感じて協力することにする。
作戦会議で情報のすり合わせを行い、その最後に、ルイフォンが「今晩、救出に向かう」と宣言した。しかも、「被害ゼロ」を目指すために斑目一族への直接的な攻撃は行わず、ルイフォンが仕入れた情報による「経済制裁」を提案。承諾される。
また、別荘に囚われている藤咲家当主は、ルイフォンとリュイセンで密かに救出することが決まった。
解散後、メイシアとハオリュウは久しぶりの姉弟の時間を過ごし、その中でメイシアは継母が自分を売ったと思っていたことは誤解だと気づく。
ほっとするメイシア。しかしハオリュウは、母が心労によって正気を失ってしまったことを隠していた。
そのころルイフォンは、「経済制裁」用の情報を取りに来たミンウェイに、貧民街で会った斑目一族の食客、〈蝿(ムスカ)〉のことを話す。〈七つの大罪〉の〈蝿(ムスカ)〉といえば、ミンウェイの死んだはずの父親だったからだ。
ミンウェイが自白を任された捕虜たちは、〈蝿(ムスカ)〉そっくりな喋り方をする。気をつけるように、とルイフォンは忠告した。
救出作戦の準備が整ったあと、ルイフォンはメイシアの部屋を訪れた。
そして、父親が救出されたら、イーレオとの娼婦になるという約束も、藤咲家の人間として自分を抑える生活も、すべて振り切って「俺のところに来い」と言う。ルイフォン自身もまた、鷹刀一族を抜けて「メイシアの居場所になる」から、と。
すれ違いながらも、最後には想いが通じ合い、ふたりは恋人同士となった。
===登場人物===
[鷹刀一族]
鷹刀ルイフォン
凶賊(ダリジィン)鷹刀一族総帥、鷹刀イーレオの末子。十六歳。
母から、〈猫(フェレース)〉というクラッカーの通称を継いでいる。
端正な顔立ちであるのだが、表情のせいでそうは見えない。
長髪を後ろで一本に編み、毛先を金の鈴と青い飾り紐で留めている。
※「ハッカー」という用語は、「コンピュータ技術に精通した人」の意味であり、悪い意味を持たない。むしろ、尊称として使われていた。
「クラッカー」には悪意を持って他人のコンピュータを攻撃する者を指す。
よって、本作品では、〈猫(フェレース)〉を「クラッカー」と表記する。
鷹刀イーレオ
凶賊(ダリジィン)鷹刀一族の総帥。六十五歳。
若作りで洒落者。
鷹刀ミンウェイ
イーレオの孫娘にして、ルイフォンの年上の『姪』。二十代半ばに見える。
鷹刀一族の屋敷を切り盛りしている。
緩やかに波打つ長い髪と、豊満な肉体を持つ絶世の美女。
薬草と毒草のエキスパート。
かつて〈ベラドンナ〉という名の毒使いの暗殺者として暗躍していた。
鷹刀エルファン
イーレオの長子。次期総帥。ルイフォンとは親子ほど歳の離れた異母兄弟。
感情を表に出すことが少ない。冷静、冷酷。
倭国に出掛けていた。
鷹刀リュイセン
エルファンの次男。イーレオの孫。ルイフォンの年上の『甥』。十九歳。
文句も多いが、やるときはやる男。
『神速の双刀使い』と呼ばれている。
父、エルファンと共に倭国に出掛けていた。
長男の兄が一族を抜けたため、エルファンの次の総帥になる予定である。
草薙チャオラウ
イーレオの護衛にして、ルイフォンの武術師範。
無精髭を弄ぶ癖がある。
料理長
鷹刀一族の屋敷の料理長。
恰幅の良い初老の男。人柄が体格に出ている。
キリファ
ルイフォンの母。四年前に謎の集団に首を落とされて死亡。
天才クラッカー〈猫(フェレース)〉。
右足首から下を失っており、歩行は困難だった。
かつて〈七つの大罪〉に属していたらしい。
鷹刀一族の屋敷に謎の人工知能〈ベロ〉を遺していた。
もとエルファンの愛人。エルファンとの間に一女あり。
〈ケル〉〈ベロ〉〈スー〉
ルイフォンの母が作った三台の兄弟コンピュータ。
ただし、〈スー〉は、まだできていないらしい。
〈ベロ〉は、独自の判断で、「敵を全滅する」というルイフォンの指示を無視した。
[藤咲家]
藤咲メイシア
貴族(シャトーア)の娘。十八歳。
箱入り娘らしい無知さと明晰な頭脳を持つ。
すなわち、育ちの良さから人を疑うことはできないが、状況の矛盾から嘘を見抜く。
白磁の肌、黒絹の髪の美少女。
藤咲ハオリュウ
メイシアの異母弟。十二歳。
十人並みの容姿に、子供とは思えない言動。いずれは一角の人物になると目される。
斑目一族に誘拐されていたが、解放された。
藤咲家当主
メイシア・ハオリュウの父。
斑目一族の別荘に囚われている。
藤咲家当主の妻
メイシアの継母。ハオリュウの実母。
メイシアが凶賊(ダリジィン)である鷹刀一族のもとへ行ったあと、心労で正気を失ってしまった。ハオリュウはそれを知っているが、異母姉のメイシアには隠している。
[繁華街]
シャオリエ
高級娼館の女主人。年齢不詳(若くはないはず)。
外見は嫋やかな美女だが、中身は『姐さん』。
元鷹刀一族であったが、イーレオの負担にならないように一族を離れた。
スーリン
シャオリエの店の娼婦。
くるくる巻き毛のポニーテールが似合う、小柄で可愛らしい少女。
本人曰く、もと女優の卵。
トンツァイ
繁華街の情報屋。
痩せぎすの男。
キンタン
トンツァイの息子。ルイフォンと同い年。
カードゲームが好き。
[斑目一族]
斑目タオロン
よく陽に焼けた浅黒い肌に、意思の強そうな目をした斑目一族の若い衆。
堂々たる体躯に猪突猛進の性格。二十歳過ぎに見える。
斑目一族の非道に反感を抱いているらしいが、逆らうことはできないらしい。
ルイフォンに鷹刀一族の屋敷に危機が迫っていることを暗に伝えてくれた。
[〈七つの大罪〉]
〈七つの大罪〉
現代の『七つの大罪』(『新・七つの大罪』)を犯す『闇の研究組織』。
知的好奇心に魂を売り渡した研究者を〈悪魔〉と呼ぶ。
〈悪魔〉は〈神〉から名前を貰い、潤沢な資金と絶対の加護、蓄積された門外不出の技術を元に、更なる高みを目指す。代償は体に刻み込まれた『契約』。
〈蝿(ムスカ)〉 = ヘイシャオ?
〈七つの大罪〉の〈悪魔〉。
ミンウェイの父。
イーレオが総帥位を奪わなければ、鷹刀一族の中心にいたはずの人物。
鷹刀一族を恨んでいる。
医者で暗殺者。
ホンシュア = 〈蛇(サーペンス)〉?
鷹刀一族に助けを求めるよう、メイシアを唆した女。
仕立て屋と名乗っていた。
[警察隊]
緋扇(ひおうぎ)シュアン
『狂犬』と呼ばれるイカレ警察隊員。三十路手前程度。
ぼさぼさに乱れまくった頭髪、隈のできた血走った目、不健康そうな青白い肌をしている。
凶賊(ダリジィン)の抗争に巻き込まれて家族を失っており、凶賊(ダリジィン)を恨んでいる。
作品名:第七章 星影の境界線で 作家名:NaN