官能小説「美那子」 秘密 一話
「ええ、なので注意したんです。いい加減な話をしてはいけないと。注意した子が言うには、公園でベンチに座っている二人がキスをしたことは間違いがないというんですよ。偶然居合わせてキスした時は向こうが気付いていなかったけど、立ち上がった時に声をかけて振り向いてびっくりした顔をされたと教えてくれました。
これは本当なら中学生としてあるまじき行為なので厳重にご両親から注意なさって頂きたいと思います」
橋本教諭が話したことに美樹は返事が出来なかった。
そんなことはないだろうと思う反面ひょっとしてという気持ちもあったからだ。
夜帰ってきた夫と相談して返事をすると答えてその場をしのいだ。
夕飯の時に美樹は秀一郎と美那子の顔をまともに見ることが出来なくなっていた。夫に話してから、まずは美那子に理由を聞こうと決めていた。
入浴を済ませて寝室に早めに入った美樹はベッドで夫に声をかけた。
「あなた、相談があるの、聞いてくれない?」
「うん、どうしたんだ?」
「美那子の先生が家庭訪問に来られてあの子が学校で秀一郎とのことで噂されていると聞かされたの。驚かないでね。二人がキスをしているところを見たという生徒さんがいるらしいの。困ったわ、本当なら。仲がいいことは前々から気付いていたけど、そんなことになっているのなら問題だわ」
「まさか!二人に聞けばいいじゃないか」
「何を言っているの。デリケートな問題でしょ!」
「じゃあどうするというんだ。妊娠でもしたらもっと大変なことになるぞ」
「妊娠だなんて、中学一年よ美那子は」
「生理があるという事は妊娠するという事だよ。おれから話そうか?秀一郎に」
「やめて!怒ったりしたら変なことになりそうだから。まずは美那子にそれとなく聞いてみるから、あなたは絶対に知らん顔しててね」
「解ったよ。それよりこんな時間にベッドにいるなんて久しぶりだから、どうだ?」
「もう、大切な話をしているのに、あなたは子供たちが心配じゃないの?」
「心配に決まっているじゃないか。でもそれとこれとは別のことだよ。夫婦だって仲良くしないといけないよ。子供たちのためにもだ」
「変な理屈ね・・・」
久しぶりに夫を受け入れた美樹は妊娠の可能性があるので外に出してと呟いて、その後すぐにお腹の上に生温かいものを感じ取った。
相変わらずというか、自分だけ終わってしまう夫の態度にしばらくは求めに応じないと怒れる気持ちになっていた。
作品名:官能小説「美那子」 秘密 一話 作家名:てっしゅう