隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
「もー! 腹立つー! ちょっとは協力してよ」
「愛ちゃん、何怒ってんだよ」
「拓君、少しぐらい片付けもしてよね」
「またすぐ使うから、片付けないでくれよぉ」
「ゲームのコントローラー、ソファに置きっぱなしじゃない」
「じゃ、テーブルの下に入れといてよ」
「そこじゃ丸見えでしょ」
ソファの横のローテーブルは、ガラス天板である。
「食べた後の袋とか、ビールの空き缶とか、ちゃんとゴミ箱まで持って行ってよね」
「はいはい、分かりましたよ」
拓君がテーブル横のゴミかごに入れようとすると、
「そこじゃない! 台所のゴミ箱!」
「もう! どこでも一緒じゃん」
「そこに捨てたら、私が移し替えないといけないじゃない」
「うるさいなぁ」
(!!! うるさい?)
[ねぇ、聞いてよパパ! 拓君ムカツクの!]
「どうしたの? ケンカしたのか?」
[ケンカじゃないわ。拓君って、私の家に何し来たのかよく分からない]
「ちょっと待って、車停めるから」
帰宅途中に、愛音からの電話に出た博之は、彼女のすごい剣幕にタジタジだ。小原とのお喋りで、癒された気分も台無しである。
「えっと、何しにって、一緒に暮らすために呼んだんだろ」
[そうだけど、結婚するまでに、同棲してみたいって言うから]
「そういうのが楽しいんじゃないのか? 何がダメなのか言ってみなよ」
[拓君ってね、ダラダラしてばっかで、何もしないの。ホントに、な・ん・にもしないの]
「お前だって、めったに掃除とか料理もしないって言ってたじゃないか」
[それはそうだけど、部屋散らかしたり、服脱ぎっぱなしにしたりはしません。食べたままとか]
「あ、そのレベル? 結婚までにちゃんと教育しとかないと、大変なことになるぞ」
[何回言っても、ダメなんだもん]
「出来るようになるまで、言い続けるしかないから」
[そんなに根気強くないし。この前なんか・・・・・・]