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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2

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 印字されたカードを見つめながら、何やら物思いに耽っている小原を、博之はまだ見ていたが、そこに岩瀬が残っているので、小原と一緒に事務所を出るわけにいかなかった。すると岩瀬が振り返って立ち上がり、
「小原さん。お疲れ様でした」
「こちらこそ、ありがとうございました」
「僕とは短い間でしたけど、色々とありがとうございました。新しい仕事でもがんばってください」
「岩瀬さんこそ、木田さんのことよろしくお願いします。木田さんの目になってあげてくださいよ」
「ハイ、僕で出来るかどうか分らないですけど。がんばります」
「ははは、本当に力になってくれ。頼むわ」
 博之も立ち上がって、小原を送ろうとすると、
「・・・木田さん。最後の相談いいです・か・・・?」
思い切って言ったのは、そのシチュエーションからもよく分かる。岩瀬に何か不信感を持たせるようなタイミングであることも確かだった。
「うん。いいよ。思い残すことがないように、何時間でも付き合うよ」


「愛ちゃん。仲直りしようよ。俺、いい夫になるからさ」
激しくキスをする拓君。
(今更っ! こんなことして何を言うの?)寒い中、半裸に乱された服で、ソファに押し倒されたまま、愛音は涙を流しながら、キスを避け切れないでいる。
「ずっと、我慢してたんだ。愛ちゃんなしじゃいられないんだよ」
愛音は、抵抗なんか無意味だと知っていた。欲望のまま行動する彼のことをよく解っていたから。
「・・・何も言ってくれないんだね」
そう言うと動きを止め、激しく迫るのをやめて、再びキスをする拓君。今度はとても静かに。
「ううっ(涙)、どうしてそんなに優しいキスが出来るの?」
愛音はキスされたままで話した。
「愛してるからだよ」
「いつも私の気持ちなんか、考えてくれてないじゃない」
拓君は唇を離して上体を持ち上げ、馬乗りになる形で愛音を見下ろした。その表情は、先ほどソファに一人で座っていた時と同じ目だった。
「もう、君のことしか考えられないんだよ」