隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
「特別サービスとかあるんですかね」
「俺は知らないって」
「あかん。また腹立って来た」
「ごめん。俺、勝手な想像で言っただけだよ」
「私も浮気してやろうか」
(誰と?)ちょっと期待でドキドキ。
「バカ言わないで」
「結婚してなかったら、もう絶対遊びに行ってたのに」
(どこへだ?)
「そんなことより、納得行くまで、ちゃんと話し合った方がいいよ」
「クリスマスプレゼントもまだですから。高いの要求してやろうと思います」
「指輪とかペンダントとか100万くらいの?」
「でも、それやっちゃうと、自分の首絞めるようなもんですよ」
「なんで?」
「結局は生活費ですから」
「あーあ、それじゃ反省させられないじゃないか」
「反省文を一筆書かせてやります」
(そんなの何の効果もないだろうに)
それから数日間、小原は大人しくなった。博之に相談したり、いつもの無駄話さえしに来なくなってしまった。それはそれで、博之は新・新映像チームの作業に入りやすく、仕事はスムーズになったが。
「木田部長、もう俺たちだけでも、十分やっていけると思います」
「そうか。よかった。意外に早く出来るようになったな」
「部長に作業の順序と手分けを、ハッキリしてもらったからですよ」
「いーやいや、藤尾君と岩瀬君がしっかりしてるからだよ」
「丸川係長がいなくなって、自分らの好きに出来るから、やり甲斐もありますし」
「そうだな。自分の思うようにやって利益を上げれば、それは自分に返って来るから」
「後は慣れて、残業時間が減れば、利益倍増ですね」
「倍は言いすぎだ。はははは」
(彼らの言う通りだ。真面目な仕事をする者が自由な発想で行動して、結果が付いて来れば、それほどすばらしいことは外にない)
秋日子の受験も結果が報われるといいと、心から願う博之だった。そして、ついに受験の日を翌日に控えていた。