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てっしゅう
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新連載!「美那子」 始まり 一話

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「美那子~お母さん出かけてくるから、お留守番お願いね。お兄ちゃんがバイトから帰って来るまで家にいてよ。解った?」

「もう~聞こえているわよ。早く帰って来てね。お腹すいちゃうから」

「はいはい、わかっていますよ。じゃあ、行ってくるから」

昭和が終わろうとしていた63年8月。夏休みで家にいた中学1年の永田美那子は、母親が親戚に父親と出掛けている間の留守番を頼まれていた。
高校二年生になる兄の秀一郎は、学校に内緒で近所の飲食店でアルバイトをしている。
この日も梅雨明けから真夏日が続いていて、連続10日間最高気温が30度を上回っていた。エアコンを1日中つけているが、汗が出るので夕方になる前に美那子は風呂場でシャワーを浴びようと、誰もいない部屋の中で裸になり浴室に入った。

秀一郎はバイト先で仲良くなった同い年の加瀬智之を誘って家に戻って来た。

「智之、上がれよ。妹しかいないから遠慮するな。美那子、お~い、いるんだろう?美那子!」

タイミングが悪いという事とはこういうことを言うのだろう。
まさか風呂場から返事が出来るわけがない。
さらに最悪なのは着替えを自分の部屋に置いてきた。
この時間に兄が帰って来るとは思っていなかったからだ。

「おかしいなあ~妹のやつ何処へ行ったんだろう」

秀一郎はトイレと風呂場の方へやって来た。

「ええ?お前シャワー浴びていたのか?友達上がらせちゃったじゃないか。解らないように早く出て来いよ」

「お兄ちゃん!」

「うん、どうした?」

「私の着替えが自分の部屋に置いてあるの。悪いけど持ってきてくれない?」

「おれがか?バスタオル巻いて走ってゆけよ。智之に感づかれないように話しているから」

「だって・・・見られたらいやだもん」

「もう~知らないよ。お前の下着なんか恥ずかしくて持ってこられないだろう、そんなことぐらいわからないのか?」

「だって・・・じゃあTシャツとジーンズだけ持ってきて」

「しょうがない奴だなあ~待ってろ、直ぐに持ってくるから」

秀一郎は美那子の部屋に入ってベッドに置いてあった服を持って再び風呂場へ行った。

「ここに置いておくぞ。出て来たらちゃんとして友達に挨拶してくれよな」

「うん」

美那子は取り急ぎ服を羽織って自分の部屋に戻り、髪を乾かして、身なりを整えて居間へ降りて行った。
二人の笑い声が聞こえてきた。

「妹の美那子です」

短くそう言うと、智之はじっと見て頭を下げた。