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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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きらら

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保坂はカンバスに向かいながら、キララと夜空を観た夜を思い出し、鉛筆を動かしていた。構図ができると、色を置き始めたが、キララの顔が思い出すたびに代わってくる。何故か、船戸光恵の顔も浮かんでくるのだ。夜空を見上げるキララの表情が、船戸光恵があおむけになって夜空を見ていた表情になってしまう気がした。
 もう少し、受験先を合格可能な大学を推めればよかった。保坂は連絡の途絶えた船戸光恵にはそんな後悔が残っていた。教師の指導の在り方で、生徒の人生が変わってしまうこともある。それが嫌で、保坂は教師を辞めたのだ。保坂は自分の感性の細かなところが嫌になった時であった。絵を描くつもりで退職したが、絵を描くことはできなかった。独身であったからとはいえ、生活する糧を見つけなければならなかった。画廊を開いた。そして、結婚もした。しかし保坂には、『先生が好きになった』と言った船戸光恵の冗談めいた言葉が、脳裏に残ってしまったのだ。
 保坂は卒業アルバムを開き、船戸光恵の顔を見た。その表情を、キララの顔にした。
 携帯に電話が入った。登録されていない電話で迷ったが、出てみると女性であった。
「お会いしたいです。キララです」
「どこで」
「お店にいらっしゃってください」
返事もしないまま電話は切られた。
 保坂は途中で切られた電話には何か意味を感じた。店に行くことは止めるべきだと保坂は思った。
 仕上がった絵を織姫のキララ宛に送った。夜空を見上げる男と女。手が触れあっている。
七夕の日に絵はキララに届いた。保坂にも七夕期日指定で小包が届いた。キララからであった。












 
 


















 
 











 


















作品名:きらら 作家名:吉葉ひろし