①冷酷な夕焼けに溶かされて
必死で言い募ると、ミシェル様の瞳が更に冷ややかに鋭く細められる。
「…セルジオの…ミシェル様への忠誠心は疑うべくもないことは」
「『ヘリオス』は覇王に献上すべく探していた。
それを隠した罪は重い。」
ミシェル様は私を鋭く見下ろすと、セルジオへ突きつけていた剣先を私の右肩に乗せた。
「セルジオの言う通り、女ならば献上できない。
だが、『ヘリオス』が私の手元にあると知れてしまったら、私の立場が危うくなる。だから」
言いながらもう一度、私の肩の位置を確かめるように剣先で触れる。
「もう二度と剣がふるえぬと安心して頂く為、この腕を献上する!」
言うなりミシェル様は、剣を大きくふりかぶった。
「!!」
その瞬間、私は凄まじい力で突き飛ばされ、直後に鼓膜をつんざく金属音がする。
「…ルイーズ!」
思わず、元の名を呼んでしまった。
ルイーズが、鞘でミシェル様の剣を受け止めたからだ。
ミシェル様は、夕焼け色の瞳を怒りで赤く燃え上がらせると、剣の柄でセルジオの頬を殴り、素早く剣先を私へ向ける。
「セルジオを捕らえよ。」
そう言った瞬間、どこからともなく影が降り立ち、セルジオを拘束した。
「ミシェル様!どうか、今すぐ私の右腕をお切りください!!それで、ミシェル様のお立場が守られ、セルジオも助かるのでしたら…」
「ルーナ。」
懇願する私を、ミシェル様は冷酷な瞳で蔑むように見下ろす。
「おまえは、私の部屋に幽閉だ。」
「…。」
「私への絶対的な忠誠を示すまで、片時も傍を離れること、許さぬ。」
(つづく)
作品名:①冷酷な夕焼けに溶かされて 作家名:しずか