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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風鳴り坂の怪 探偵奇談15

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晴れ着



寒さの厳しい2月の弓道場で、瑞(みず)ら部員は稽古に励んでいた。春に向け、全員の士気が乗りに乗っている。大きな試合を経験し、一年生たちは技術も精神もレベルアップしてきた。副将として、瑞はそれを強く感じる。一人ひとりの意欲というか自信が伸びてきたのは、ひとえにそれぞれの努力と、それを逃さず認めてくれる主将の存在があるからだろう。

「お疲れ。ちょっと集合してくれ」

主将会議に出ていた伊吹(いぶき)が戻ってきて、部員らを集めた。主将が来ると、いっそう気が引き締まる。

「主将会議の報告がある。みんなホームルームで聞いたと思うが、市内で不審者情報があがってる」

聞いた。新聞の地方版にも載っていて、今朝祖父ともその話をしたところだ。

「朝霧町周辺で変質者による被害が出てるのは知ってるな?部活は一時間早く切り上げだ。現場周辺の生徒は集団で下校するように」

最近市内で多発している妙な事件のことだろう。夜道を歩いていて髪を切られた、足を引っ張ってこけさせられた、自転車の後ろに乗られた、追いかけられた、水をかけられた…等々。小学生からお年寄りまで、その被害者は十人を超えているという。幸いというか死者は出ていないが、傷害事件として警察も朝霧町内の警備、巡回を強化しているという。

「声かけられるらしいね」
「やばくね?髪切るとか…変質者じゃん」

部員らの不安そうな声がさざなみのように広がっていく。おかしなやつがいるもんだな、と瑞は思う。

「変質者じゃなくて、オバケらしいよ」
「まじで?あの辺フンイキやばいもんね~」

瑞の後ろの二年生が、こそっと話しているのが聞こえた。
オバケだって?そんな噂になっているのか。