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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風鳴り坂の怪 探偵奇談15

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風の鳴る坂




遅くなってしまった。少女は雪のちらつく中、家路を急いでいた。塾の帰り、友だちとバス停で別れて一人歩く。寒い夜だ。

(あ、近道…)

見たいドラマは十時から。今日見逃したら、明日学校で話題についていけない。もう九時半を回っている。クラスの中で浮かないようにするには、みんなと同じ場面で笑って、同じことで腹を立てて、絶対にはみださないようにしなくちゃいけないから。だから、いつもなら絶対に通らないそのくらい坂道を、少女は登った。

(暗いけど、走れば平気かな…)

坂の上まで出れば、車の通りもある。小学生のときはよく通ったから覚えている。少女はうっすらと雪の積もった坂道を小走りで駆け上がる。舗装もされていない古い抜け道。両隣りを塀と石壁に挟まれた、幅の狭いその坂。街灯がないから、いつもなら絶対に夜通ることはない。今日だけ、今日だけ。あの土塀の向こうの墓場の卒塔婆や、石塀の向こうのだらりと垂れ下がった木々の影を見ないように、少女は駆ける。

そのとき。


…も う し

背後から声を掛けられ、少女はびくりと足を止めた。心臓が一瞬止まったと錯覚するような驚きに、声も出なかった。

…そ ん な に い そ い で、ど こ へ ゆ く

ぶわっと全身に鳥肌がたった。女でも男でもない、不可思議な、声。まるでねっとりとした泥の中から話すような、粘り気のある、湿度を持った声。