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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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夢魔

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 ――あれから数年。

 私は或るホラー文学賞で大賞を獲り、計らずもプロの小説家として忙しい日々を送っている。
 かつての郷田先生の作品より切羽詰った緊迫感が出ている分、ホラー小説として優れているなどという書評もたまに目する程である。
 それもその筈、私は郷田先生とは違い、黒い夢魔を御しきれていない。一寸でも油断すれば、膨らんだ悪夢で脳がぐずぐずに壊されてしまう。そう、郷田先生の言った、夢魔は悪夢を見せるだけというのは嘘だったのだ。
 夢魔の奴は今宵も私をけしかけるのだろう。早く次のを書き上げろ。夢魔の種をばら撒くのだ、と。

 郷田先生はと言うと、あの後二本のホラー小説でヒットを飛ばした後、突然に恋愛小説に転向してしまった。
 そう言えば、あの夜の話でも、元々はそういう系統の作品を書いていたと言っていた。
 だが、その元々とは違い、先生はその分野でも異例の大ヒットを飛ばし続けている。
 私もその殆どを読んだが、それらは過去の名声故のヒットではなく、真に傑作なのだと思い知った。
 読むものを夢の中に引き入れるようなストーリーや描写。
 私は密かに、あれは大きく育った”白い夢魔”を頭の中に飼っているからだと睨んでいる……。


             おわり


 2004年に書いたモノです。
 古くてすみません。
 また書きたくなってきそうな気配もあるのですが。
 もう少し……。
作品名:夢魔 作家名:郷田三郎(G3)