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【完】全能神ゼウスの神

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ゼウスの愛


神の国のプロビデンスの間と魔道界の時空の部屋が繋がった空間に、黒い影が浮き上がった。

リカが召喚した黒い霞に覆われるヘラ様は禍々しく、凄まじい負のオーラを纏っている。

それは戦争で汚染されている星が発するより強く、リカの白銀髪と金の瞳が瞬時に黒く染まった。

「…ぐっ…」

「リカ!」

私はオーラを分けようと、よろけたリカの背中を抱きしめる。

けれど、何も起きない。

「…!めい…光らない…?」

異変に気づいた陽が、驚きに目を見開いて私を見た。

(やっぱりフェアリーの力はもう…。)

悔しさに唇を噛みしめると、リカが私をゆっくりとふり返る。

「めい。」

リカはこめかみから汗を滴らせながら、私を包み込むように抱きしめた。

「…はぁ…やわらか…」

私に頬擦りしながらリカがそう呟いた時、恐ろしい殺気を感じる。

「おおおおお!」

空間がビリビリと振動し、体の奥深くからえぐるような唸り声が鼓膜をつんざいた瞬間、ヘラ様の体から青白い閃光がいくつも放たれた。

「魔導師長!」

傍にいたギルとイザークが咄嗟に魔法でシールドを張る。

辛うじて跳ね返したけれど、シールドも打ち消された。

「皆、私の後ろへ!!」

リカは叫びながら、背中に虹色の壁を作る。

それと同時に撃ち込まれた閃光が、壁を護るように立つリカの腕を掠めた。

赤い鮮血が、私の頬へ飛び散る。

その瞬間、私の体の芯に残るリカの情熱の証が、激しく甘い疼きをもたらした。

「っあ…!」

思わず、嬌声を漏らす。

「悪ぃ…汚しちまったな。」

リカが苦し気に肩で息をしながら、私の頬を親指でぐいっと拭った瞬間。

「!!」

私たちを、眩しい虹色の光が包み込んだ。

そして一瞬で、リカの体から負のオーラが浄化される。

「えっ?」

その光の強さはフェアリーの時以上で、室内に広がる虹色の光でヘラ様の纏う黒い霞が薄れていくのが見えた。

(もしかして、私の体の中にゼウスの力が入ったから?)

(ゼウスの血液が肌に触れたことで、内に得ていた体液をフェアリーの力として呼び覚ました?)

信じられない現象だけれど、そうとしか考えられない。

確かに私は今、強大なフェアリーの力を持っている。

「今だ!」

リカの鋭い指示で、天使や悪魔、魔導師達それぞれが構えていた力を放った。

リカはその皆の力を一身に集めると、魔法を唱えながら増幅させ、一気に放つ。

虹色の閃光がヘラ様を包み、少しずつ纏う闇を浄化していった。

どんどん浄化されてはいくけれど、なかなかヘラ様と魔物を引き離すことができない。

最大限の力を使い続ける皆から、じょじょに疲れが見えてくる。

「頑張れ!」

リカが皆を奮い立たせるけれど、集まる力が弱くなっているのは明らかだった。

それに合わせるように、少しずつ闇が濃く戻るヘラ様。

(…私の光のほうが、一気に浄化されてたよね…?)

そう思った瞬間、険しい表情でリカがふり返る。

「余計なこと、考えんなよ?」

白銀髪に金の瞳のゼウスに戻ったリカを私は見上げ、おどけた口調で軽く睨んだ。

「も~、勝手に考え読むなんて、プライバシーの侵害で訴えるよ!」

再び戻ったフェアリーの力は誰よりも強く、それを全て放てばヘラ様の闇を一気に浄化できる。

そう確信した今、私の役割はただひとつ。

私はリカの首に抱きつくと、その後頭部を引き寄せた。

「リカ、腕の傷、大丈夫?」

私の言葉に鼻先をくっつけたまま、リカがチラリと怪我を負った腕を見る。

「ん。」

無表情だけれど、リカはやわらかな口調で小さく頷いた。

きっと心の中では微笑んでいるであろうリカに、私は微笑みを返しながら美しい唇に口づける。

金色の瞳と間近で視線が絡むと同時に、私はサッとその体から離れた。

「めい!」

咄嗟に腕を掴もうとするリカをかわし、そのまま身を翻した私は、ヘラ様へ向かって全力で駆け出す。

突然向かってきた私に、ヘラ様はすぐに攻撃態勢に入った。

「めい!やめろ!!」

悲鳴のようなリカの声と同時に現れた虹色の壁が私を阻もうとするけれど、それよりも早く放たれたいくつもの青白い閃光が私の体を貫き、血が噴き出す。

「っあ!」

体に受ける衝撃と激痛に転びそうになるけれど、私は虹色の壁と青白い閃光をかわしながら必死に足を動かし、遂にヘラ様へ抱きついた。

その瞬間、爆発するように真っ白な光が弾ける。

身体中から全ての力を吸い取られながら、私はその白い光に意識が融けていくのを感じた。

「めい!!!」

遠くで、聞き慣れたいくつもの声が私を呼ぶのが聞こえる。

「…ヘラ…様から…離れて…!」

融けゆく意識の中で魔物を排除しようと手を伸ばした。

激しく唸る黒い霞を、もう一度、手から放った虹色の光で浄化する。

すると悲鳴のような甲高い叫び声をあげなから、黒い霞は霧散した。

それと同時に、自分の体もバラバラになる感覚がする。

そんな私をかき集めるように、ふわりと抱きしめられた気がした。

「めいさん…」

高く澄んだ声が耳元で聞こえた気がするけれど、もう何も考えられない。

指一本動かせない私は、そのまま崩れ落ちた。
作品名:【完】全能神ゼウスの神 作家名:しずか