新・覇王伝__蒼剣の舞い【第3話】
3
『オ前ハ誰ダ?』
金色の眸を向けながら“彼”は云う。
『オ前ハ___誰ダ?』
鋭い爪と鱗に覆われた手。
「あ…」
『喰ラウテヤロウカ?拓海』
「うわぁぁぁっ!!」
拓海の絶叫は、蒼国王城に響き渡った。
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「___で?」
今にも怒りを爆発させそうな男に睨まれ、焔は笑顔を引きつらせる。
「やだなぁ…、大袈裟なんだから」
「てめぇ…やっぱり一度死ね」
「セイちゃんには、何もしてないじゃないか!」
「うるせぇっ」
「星宿さま、止めなくていいんですか?本当に殺されちゃいますよ」
「いくつもことだからな」
「でも…」
拓海としては、複雑だ。本当なら、焔の被害に遭い怒っているのは自分の筈なのだ。ついうたた寝をし、背後から近づいた焔に背筋をつぅと撫でられて、拓海は絶叫した。
しかも見ていた夢が夢だけに。
拓海が来る前は、その被害は清雅が受けていた。叫ぶ事はしなかったが、剣を振り回し焔を追っかけていた。二度と来るなと蒼国追放したが、四獣聖・朱雀と云う立場上その拘束力は、覇王しかない。
つまり、四獣聖の就任と解任、更には承認は覇王しかその権限がないのである。前覇王がなくなっても、解任令は下りていない以上、彼らは四獣聖であり続ける。故に覇王の親衛隊と呼ばれるのだ。
だが、何故あんな夢を見たのか。
拓海の表情は、途端に硬くなる。
____恐らくアレだ。
白王の突然の来襲に変化した清雅。
『そのまま、魔物になるがいい』
白王の放った言葉は、夢の中で具現化される。
『万が一、邪心を抱く者が七星を揃えれば、ドラゴンは単なる魔物になる。四国を破壊する魔物にな』
北方七星・斗宿の云った言葉は、恐らく事実。
「拓海」
「え…」
「どうかしたか?」
「いえ、何でもありません。星宿さま」
ある可能性を頭の中で打ち消して、拓海はにっこりと笑った。
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「なに…?」
その報せに、男のグラスを持つ手がガタガタと震え出す。
「蒼王は、覇王を目指しています」
「野育ちの分際で、覇王家の嫡男たる吾を差し置いてか!?おのれ…っ」
覇王家崩壊25年経ってもその権力に固執する男は、怒りを露わにした。
作品名:新・覇王伝__蒼剣の舞い【第3話】 作家名:斑鳩青藍