新・覇王伝__蒼剣の舞い【第3話】
2
____ドンっ!
「焔さま、今のは…っ」
「タクちゃん、セイちゃんの部屋だっ」
星宿、焔、拓海は妙な胸騒ぎを覚えた。
「清雅さまっ」
そこに、彼はいた。
ふわふわと漂う白装束の人物と対峙して。
「ふふ、それが蒼剣か…」
「…聖連さま…?」
「久しぶりだね、星宿。七年前、お前が何故吾ではなく清雅に就いたのか理解ったよ」
「星宿さま、この人…」
「本体を残してきて助かったよ」
聖連は、目を細め清雅を振り返る。
「清雅さま」
「…だ」
「え…」
「オ前ハ…誰ダ」
聖連とは違う金色の眸。
「面白い…。そのまま魔物になれ、ドラゴン」
「清雅さまっ!!」
蒼剣の振動が、ピタリと止まった。
「…っ…、冗談じゃねぇ…!」
「…!!」
蒼い光が、聖連を裂く。
「死んだ?」
「いや、あれは幻影だ。本体は、白碧だ」
「白碧って…」
星宿の言葉に、焔はゴクリと生唾を呑んだ。
これまで、一度も動かなかった西の大国。白王は高い異能の主だと云う。その名は確か___聖連・ファン・ウォン。
「清雅さまにとっては、二番目の義兄上だ」
その男が、自ら動いた。明らかに、敵として。
「清雅さま…」
「あの野郎、何かを知ってるぜ」
髪を掻き上げる清雅は嫌そうに唇を噛んだ。
『そのまま魔物になれ、ドラゴン』
あの意味は、何なのか。
「清雅さま、白碧の聖連さまが動いたとなると…」
星宿の硬い表情に、清雅は察した。
「奴もドラゴン七星を探してる、か?」
「ええ」
「まったく、とんでもねぇ剣だぜ」
今も蒼く光る蒼剣。秘められた力は未だ目覚めない。
「タクちゃん」
声を掛けられた拓海が、ビクッと震える。
「え…」
「どうしたのさ。真っ青な顔して」
「え…あ…明かりの所為ですよ…」
拓海のぎこちない笑みに、彼らは気付いただろうか。いや、いた。
「ちっ」
拓海の背後で軽く舌打ちをして、彼はそれを隠した。
拓海が顔色を変えた、それを。
「ふふ、面白くなってきた…」
鏡面を細い指で撫でながら、白王・聖連は唇を綻ばせる。
「白王陛下」
「須黒、義兄上に教えてやるといい。蒼剣は清雅が持っていると」
「しかし、それでは…」
作品名:新・覇王伝__蒼剣の舞い【第3話】 作家名:斑鳩青藍