新・覇王伝__蒼剣の舞い【第3話】
「…聖蓮がの」
「我が王をお疑いにございますか?これまでに、情報を提供なさっている貴方様の弟君を」
「確かにアレは、昔から吾に逆らった事がなかったの」
黒王は、ドカリと玉座に座り笑みを浮かべた。
許せぬのは、蒼国の清雅だと改めて憎悪を燃やす。
七年前まで、自分にもう一人弟がいるなど知らなかった。その弟が、自分の野望を倒し、蒼剣で覇王を目指そうとしているとは。
そんな黒王を、聖蓮の命で黒抄に来た須黒は冷ややかに見つめていた。
___白王さまの云う通り、単純な御方だ。
黒王は、聖蓮の思惑のまま利用されているとは知る由もなく、蒼国攻めを命じた。
その蒼国へ、向かう者がいた。
長い金色の髪の男装の女性だ。
「____リズ・フォン・レイン…だな?」
「良く私のフルネームを知っているわね?貴方、覇王家側の人間?」
「なぜ、そうだと?」
「覇王家側の人間しか知らないのよ。元貴族とか、或いは黒王や白王、そして紅王以外にはね」
リズ・フォン・レインの前で、男はクククと嗤っていた。
肩に掛かる癖のある金髪に碧眼、瑠璃色の甲冑、向けられるものは明らかに殺意。
「さすが、“黄金の姫”だ。だが、蒼国に行かせる訳には行かぬ」
「狙われる理由はないわよ」
「珠の守り主だからだ」
「珠?貴方何者?」
男は、スラリと剣を抜いた。
「ドラゴン七星・亢星の珠貰うぞ!!」
「名乗りもせずに、斬りかかってくるなんてどういう神経?云っておくけど、私の剣を見損ないで!」
___カン!
お互いの剣は、火花を散らした。
蒼白くリズの胸元で何かが光る。
「珠はそこかぁっ!!」
飛びかかる男を、別の誰かが剣で制した。
燃えるような赤い髪の、もう一人の男装の女性。
「私が相手になるわ」
「…っ」
男は、悔しさを滲ませすっと消えた。
「…凌姫さま?」
「久しぶりね。リズ」
彼女を助けたのは、紅華国・紅王、凌姫であった。
作品名:新・覇王伝__蒼剣の舞い【第3話】 作家名:斑鳩青藍